2017 Fiscal Year Research-status Report
人文主義政治思想史における快楽主義の影響の研究:「徳の政治学」の功利的変容
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16K03491
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
厚見 恵一郎 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (00257239)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マキァヴェッリ / エピクロス主義 / ルクレティウス / 人文主義 / ルネサンス / 徳の政治学 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該課題に関連して、2017年度は以下の研究活動を実施した。 (1)2017年6月にケンブリッジ大学において実施された初期近代イタリア政治思想についてのカンファレンスに参加した。 (2)(1)にあわせて、大英図書館、ケンブリッジ大学図書館、オクスフォード大学図書館にて、エピクロス主義者ルクレティウスのルネサンス期における写本調査と史料収集を実施した。この写本調査は、おもにAda Palmer, Reading Lucretius in the Renaissance, Harvard University Press, 2014の内容に則りながら、ルクレティウス『事物の本性について』のルネサンス期写本作成者による余白への書き込みを通じて、16世紀前半におけるルクレティウスの読まれ方を確認するために実施されたものであった。パーマーによれば、印刷本が出回る以前の手写本時代のルクレティウスへの書き込みは、文献学的な修正などが中心であり、原子論哲学を提示したルクレティウス第2巻に注目している手写本は少ない。今回の調査では、この数少ないとされる手写本のうち、Pomponio Letoに由来するとされる写本などを写真撮影し、パーマーによって指摘されている該当箇所を確認することができた。 (3)関連先行研究論文の読解と研究メモの執筆を進めた。 (4)「徳の政治学の系譜」との関連で、ルネサンス・イタリアにおけるユートピア政治思想にかんする次の論文を公刊した。厚見恵一郎「ルネサンス・イタリアにおける反キケロ主義とユートピア」、石崎嘉彦・菊池理夫編『ユートピアの再構築』、晃洋書房、2018年1月、30-55頁、ISBN:978-4-7710-2931-6
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ルネサンス・イタリアにおけるエピクロス主義受容にかんしては、文献収集において一定の成果をみ、読解もわずかながら進めることができたものの、北方人文主義については、ガッサンディについての若干の研究をフォローしたとはいえ、十分に考察を広げ深めることはできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
イタリアのみならず北方人文主義にも視野を拡大しつつ、西洋初期近代政治思想史におけるエピクロス主義の影響を考察し、徳の政治学の功利的変容を分析する。 海外の研究動向調査等のための学会参加・研究出張も検討する。
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Causes of Carryover |
海外出張が1度のみにとどまったため。 海外研究動向調査等のための学会出張・研究出張を検討する。
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