2017 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ連邦議会指導部の強化と立法過程の行動論的分析
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16K03496
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
松本 俊太 名城大学, 法学部, 教授 (90424944)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アメリカ連邦議会 / 政治指導者 / 分極化 / 行動論 / 政策過程論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、第1に、アメリカ連邦議会において進行している二大政党の分極化の一側面として増加している、議会指導部の裁量による議題や議事手続の選択と、その結果としての立法過程の帰結、および両者の関係を説明する。第2に、理論的には、議会指導部のパーソナリティ・政策過程と権力過程の偶然の結びつき・議会指導部と大統領や議員のネットワークといった、行動論的な理論枠組を用いる。 (1)理論面では、第1に、アメリカ連邦議会内の政党組織の強化の歴史的経緯、およびその間の連邦議会指導部の行動に関して、先行研究のリヴューを行い、リヴュー論文の執筆を行った。第2に、より一般的な理論研究として、社会学(とくにリーダーシップ・権力論・社会ネットワーク理論に関する分野)や公共政策学(とくに政策決定過程)の理論動向のリヴューを行った。第3に、議会制度一般について論じる前段階として、アメリカ連邦議会に関する概説書や、比較議会研究(日本の国会や立法の研究を含む)の文献を収集し、リヴューを行った。 (2)実証面では、計量分析を行うためのデータ・セットの作成に必要なデータの収集と整備を行った。今年度は、1973年~2005年までの上下両院議員の役職やネットワーク等に関するデータ・セットを作成した。このデータ・セットを用いて、議員のネットワークに関する計量分析を行った。その主な知見は、議会指導部や規則委員長といった議会内政党の主要な役職に就いている議員は、分極化が進行するにしたがって、役職に由来する権限以上の、個人的な影響力をもつようになっている、というものである。 (3)実証面として他には、作成済みの2つのデータ・セットのクリーニングを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)理論面は予定より早く進行している。当初計画していた内容の文献研究は予定どおり進んでいる一方で、当初の計画にはなかった、社会学全般の研究動向のリヴューや比較議会研究のリヴューを行うことが必要と判断し、これを行った。 (2)実証面は、昨年度の遅れをある程度取り戻したものの、やや遅れている。今年度の最大の進捗は、データ・セットの作成を行うアルバイトを雇用し、上下両院議員のデータ・セットを一通り作成したことである。このデータ・セットを用いて、平成30年度初頭に行う学会報告に向けて論文を1本執筆した。他にも理論をまとめたリヴュー論文を執筆しているが、出版のスケジュールの都合上、刊行に至っていない。また、当初計画していた、アメリカの立法過程に関わる専門家への聞き取り調査は当面不要と判断し、これを行う目処を立てていない。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)順調に進行している理論面の研究については、平成30年度にリヴュー論文を1本または2本公表することを目標とする。 (2)実証面については、引き続きアルバイトを1名雇用し、作成済みのデータ・セットの拡張と整備を行う。専門家への聞き取り調査については、研究の進捗状況に応じて随時これを行う。 (3)定量的な実証分析を含む論文を1本または2本執筆し、2つ以上の学会で報告する。
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Causes of Carryover |
(1)初年度(平成28年度)に予定していた支出を行わなかった分を、今年度(平成29年度)に支出した。アルバイトの雇用とコンピュータの購入が主に該当する。今年度の支出額自体は、当初の予定の800千円よりやや多い約840千円である。 (2)次年度(平成30年度)に2度の海外学会への参加を予定していることに加え、次年度の交付決定額が600千円とやや少額であるため。
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