2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K03499
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
山谷 清志 同志社大学, 政策学部, 教授 (90230599)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今川 晃 同志社大学, 政策学部, 教授 (50183744) [Withdrawn]
窪田 好男 京都府立大学, 公共政策学部, 教授 (60330411)
橋本 圭多 神戸学院大学, 法学部, 講師 (60755388)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 政策評価 / アカウンタビリティ / 18才選挙権 / 参加型評価 / 参加型予算 / ポピュリズム / シビリアン・コントロール / 研究開発評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は新しい展開を目指し、アカウンタビリティの重要な舞台である予算にどのように参加できるのか考えた。とくに、新たに選挙権を持った18才、19才の若者が、何を目当てに選挙に参加すべきか、また繰り返される日常的な政策分野にどのように関わっていくべきかを考えるとき、予算は重要な項目になる。予算という実のあるターゲットに市民が参加する場面を設定するとき、評価と予算とは自然に結びつく。ここに長年の懸案、「評価結果をどのように予算に反映させるか」を解決する糸口が見いだされる。2017年度の研究実績は以下の5点である。 論文は①「政策評価とアカウンタビリティ再考-『18才選挙権』のインパクト-」、日本評価研究Vol17,No.2,August 2017,pp.1-12、査読有り。②「参加型評価と参加型予算-ポピュリズムと18才選挙権-」、同志社政策科学研究、第19巻第1号、2017年10月、pp.191-205、査読無し、がある。 また口頭報告は3つある。①「参加型評価と参加型予算-ポピュリズムと18才選挙権-」同志社大学政策学会、2017年4月19日。②「市民参加と参加型評価のフロンティア-参加型予算の可能性-」、日本評価学会春季第14回全国大会、2017年5月20日。 ③「研究開発政策の評価とガバナンス-アカウンタビリティの視点から-」、日本評価学会第18回全国大会、2017年12月16日。 なお、③の学会報告は本研究のもう一つの可能性を示唆している。すなわち研究開発分野の政策については、半世紀も前からアカウンタビリティの追及が難しいと指摘され、研究に対する「シビリアン・コントロール」の必要性が主張されてきた。合法性、合規性、予算の適正使用にとどまらない、アカウンタビリティ追及方法が模索されてきたのである。ここにシチズン・コントロールとして市民が政策評価を行う意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
18才選挙権が導入されても、高校生の「政治教育」に政策評価の視点が必要だという提言は残念ながら無視されてきた。政策評価の認知度が低いため高校の教育現場に届かない。そもそも政策評価が民主主義のリテラシーだという認識をPRする場が無い。その反面、期待もある。教育官庁や研究分野での評価ニーズの高まりと評価活用機会の拡大である。たとえば、スーパー・グローバル・ハイスクールやスーパー・サイエンス・ハイスクールにおいて評価は必須になっており、地方創生や国土強靱化など社会的インフラ整備事業や関連ソフト事業に評価が求められている。若者が政策評価を行う外的条件は整ってきた。そこに、滋賀県東近江市のように市民の寄付金をコミュニティ・ビジネス基金に活かす評価の仕組みを作る地方自治体、住民参加型予算に参加型評価を組み込むスキームを作る志木市・名張市・市川市も現れてきた。この動きはさらに広がる可能性が高く、政策評価を活用する場面は拡大するはずである。その意味で、高校生対象の政策評価の授業、実践の取組は、本研究が期待したように、実は始まっている。 ところで、大きな危惧が存在する。地方自治体の「身近かな政策」に集中すると、政策評価の稼働範囲を狭めはしないかという危惧である。若者の政治離れ、無関心を克服するため身近な課題を取り上げたが、短期的課題に偏った視点を植え付ける恐れがある。そこで政策評価は普遍的なツールであることを再確認するためひとつ提言したい。すなわち、科学技術政策の研究である。青森県のITER計画、岩手県の国際リニアコライダー、沖縄科学技術大学院大学など、科学技術政策に対する地方自治体の期待は高い。これら巨額の予算を長期間提供し続ける政策を、どのようにアカウンタビリティと政策評価の俎上に載せるべきか、次世代を担う若者の重要な研究課題になる。
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Strategy for Future Research Activity |
この研究で重視するアカウンタビリティを追及する方法は2つある。手続を使った追及と内容に対する追及である。前者は合法性、合規性、効率をチェックし、後者は政策を有効性の視点で評価する。政策実施手続に市民が参加してアカウンタビリティを追及する参加型評価が、政策内容にどのように切り込んでいくかは大きなテーマであるが、実はそうした実践、研究は少ない。そこで、参加型評価が難しいとされるテーマを選択し、内容の評価でアカウンタビリティを追及する試みが期待される。それを科学技術政策で試みたい。 科学技術政策は地域振興、中央からの補助金、雇用創出、地域イメージのアップ、関連公共事業など市民の期待は高い。しかし科学技術は高度に専門化しているため、素人の市民には理解が難しく統制困難である。次善の策として、予算や会計の監査、法令遵守状態を手続的にチェックするが、多くの市民は監査やマネジメントに関心がないのでアカウンタビリティとしては弱い。反面、科学技術政策の担当者もその活動が市民にどれだけプラスの効果を持つのか説明しづらい。科学技術政策にとって不幸なこの現実を打開するべく、たとえばサイエンスカフェやサイエンスコミュニケーター事業が考案された。それでも研究開発評価、監査や独立行政法人評価、行政事業レビューなど膨大な作業は続く。 そこで今後、各種の科学技術政策に対するシチズン・コントロールの可能性を研究課題として取り上げたい。まず多重的に錯綜する手続的統制の見取り図を描き、各官公庁が行う政策実施活動のモニターや評価の実践を明らかにする。次に、政策の実質的内容に踏み込み、その評価活動にどのような課題が発生しているか、アカウンタビリティの視点で確認する。民主主義のリテラシーとして、参加型評価はさらに洗練されるはずである。
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Research Products
(5 results)