2016 Fiscal Year Research-status Report
原子力と核不拡散をめぐる日米関係に関する多角的歴史分析と今日的政策含意の検討
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16K03507
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
黒崎 輝 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (00302068)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 国際関係史 / 冷戦史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は史資料調査を進めながら、研究成果を発表する準備に取り組んだ。その成果の一部として論文一編を作成し、海外の英文雑誌に投稿した。さらに、米国の研究機関が開催した大学院生・若手研究者向け短期研修プログラムでの講義に研究成果の一部を生かした。 史資料調査は国内で実施した。海外での史料調査を予定していたが、育児休業を取得したため、これを中止し、国内での文献資料調査に専念した。日本の原子力開発や日米原子力協力、日本の国内政治、日米関係に関する文献を主な調査対象として、関連文献を広範に渉猟した。その結果、さらに調査が必要な国内の資料を新たに発掘することができた。また、海外の文献の調査も進めた。そのために所属機関の図書館や国会図書館を利用した。 史資料調査と並行して、研究成果の公開にも努めた。主な成果として、1960年代に日本国内で行われた核武装研究を米国政府の分析や日本の原子力開発と比較して再検証し、日本の核政策決定構造が原子力開発や核政策に与えた影響を考察した英文論文を作成し、軍縮研究分野の著名な海外ジャーナルに投稿した。査読の結果、論文の掲載が決定しており、平成29年度年中に発表される予定である。 また、米国の研究機関Wilson CenterのNuclear Proliferation International History Programが韓国で2016年11月に開催した大学院生・若手研究者向けの短期研究プログラムAsia-Pacific Nuclear History Instituteに講師として招待され、本研究の研究成果を踏まえて、日本の原子力開発と核政策の歴史について講義した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず、史資料調査の面では、育児休業取得のため、平成28年度の重要な研究活動として計画していた海外史料調査が実施できなかった。その結果、一次資料の調査が遅れることになった。その一方で国内の文献調査に精力的に取り組み、予定よりも国内の文献調査は進んだ。ただ、その過程で新たに調査が必要な文献資料が見つかり、その調査は来年度以降の課題として残された。 また、研究成果の発表に関しては成果があった。まず、英語圏に向けて発表するため、論文をまとめ、海外ジャーナルの査読を通すこともできた。この論文の作成を通じて、1960年代の日本国内の核武装研究や日本の原子力開発、日本の核政策決定構造について研究を進めることができた。また、海外ジャーナルに投稿するため、海外の先行研究の調査にも取り組み、核拡散問題に関する歴史研究、理論研究、政策研究を広範に調査し、歴史研究と理論研究、政策研究をつなげるための分析の視角について検討を進めた。 以上の通り、一次資料の調査に遅れが生じたが、国内の文献調査や研究成果の発表、研究全体を取りまとめるための分析の視角の検討では進捗があった。それゆえ、本研究は着実に前進しているものの、やや遅れていると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は研究専念期間を利用して本研究課題への取り組みを加速したい。同年度9月から翌年度5月まで米国の研究機関Wilson Centerのフェローとして在外研究を行う予定であり、その間、本研究課題に取り組むことになる。同センターは本研究の遂行に必要な史資料調査を実施する上で格好の場所にあり、その進捗が期待できる。また、センターでは本研究に関連したプログラムがいくつかあり、米国内外の研究者との交流や、研究報告の機会を通じて、本研究の推進を図りたいと考えている。また、在外研究に入るまでは都内に研究拠点を移し、国会図書館や外務省外交史料館を利用して国内での史資料調査を可能な限り推進する。 平成30年度以降は、同年度5月までの在外研究の成果を生かして、研究全体の取りまとめに向けた取り組みを進める。そのために国内外で研究成果の発表を行ない、他の研究者からのフィードバックを積極的に得るように努める。また、予定された国内外での史資料調査を着実に実施する。
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Causes of Carryover |
育児休業の取得により、予定していた海外調査を実施できなかったため、旅費のほとんどが未消化になった。その代わりに文献調査に取り組み、そのために必要な図書、資料の購入・貸借に物品費を利用した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度9月から在外研究に入るため、その滞在費に利用する予定である。
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