2017 Fiscal Year Research-status Report
国際制度の「共通の利益」に与える影響に関する政治学的研究
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16K03511
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古城 佳子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30205398)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 淳 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (90285081)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 国際協調 / 共通の利益 / 国際制度 / グローバル・イシュー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国際関係において「共通の利益(common interest)」の認識の形成に国際制度がどのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的としている。このテーマは、近年の国際関係において、地球規模問題(global issues)が増加しているという認識が醸成され「共通の利益」認識が高まっている一方で、アメリカのトランプ大統領の主張に見られるように「共通の利益」への関心の低下も見られる状況においては、更に重要なものになったと考える。 平成29年度は、前年度に研究代表者を中心に行った国際公共財論とオーケストレーション論の批判的検討を踏まえ国際制度についての考察を進め、オーケストレーション論の代表的研究者であるKenneth W. Abbott (Arizona State University)とDuncan Snidal (University of Oxford)両教授を招いて行ったセミナー(Orchestration and Polycentric Governance)において、意見交換を行った。この成果をまとめた『グローバル・ガバナンス学 1』所収の論文において、自由主義の系譜にある国際公共財論とオーケストレーション論では十分に論じられていない勢力分布の変化が国際制度に与える影響とそれに伴い国際制度が「共通の利益」認識に与える影響の重要性を指摘した。 また、研究分担者は、「国家の安全と個人の安全とは両立するのか」というテーマについて、特定領域における多数派の自由と少数派の不自由、そして特定時点以前の価値配分の回復と特定時点以後の価値配分の維持に焦点を当て、国際制度が十分に機能しない状況では、関係主体が同時にその価値の保全を実現できるものではないことを論証し、安全の確保が容易ではないことを理論的に明らかにした。この成果についての論考は次年度に刊行予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に述べた点はおおむね実施することができた。特に、海外から本研究に密接に関係する研究者を迎えて意見交換できた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に向けて、理論的考察に基づき事例研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
海外から招いた研究者の旅費の一部が本人たちの資金によって賄われたことにより、当初の予算よりも旅費支出が少なくて済んだため。次年度には、資料調査の費用のための旅費に当てる予定である。
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