2017 Fiscal Year Research-status Report
グローバルプレイヤーとしてのフランスの「影響力外交」の考察
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16K03515
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
渡邊 啓貴 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (80150100)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 政治学 / 国際協力 / 国際貢献 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はフランスで大統領選挙があり、そのフォローに多くの時間を費やしたので、研究成果もそれに関連するものが多くなった。2017年のフランス大統領選挙にみられるフランス政治・社会の現象の分析とその背景にある政治文化の基本について検証する良い機会でもあった。 その意味では日本国際問題研究所、日仏会館と共催して知的・文化交流を7月に日仏会館・同研究所で開催し、たくさんの出席者を得たことは大いなる成果であったと確信している。この成果についてはフランス・政治刷新研究所から書籍として出版される予定である(2018年6月)。その中ではフランス側の政治風土と文化についてのフランス側パネリストから示唆に富む発言があった。 渡邊はあらためていうまでもなく文化外交を広義に「対話」ととらえており、接触を恒常化させることで異なった文化や価値観の交流を通して親密感や理解が深まるものと考えている。そのプロセスこそ重要であり、具体的成果を焦って交流そのものを矮小化させてはならないという持論である。その意味では2017年は広範な活動による成果が得られたと考えている。特にポピュリズムの台頭はその背景となる経済上状況ばかりではなく、政治社会文化事情も重要な要因となることは昨年のフランス大統領選挙に見られた。 現段階では本科研プロジェクトの枠組みの概略が固まりつつあるので、それをもとに肉付けしていく。具体的なトピックについて、文化外交の諸定義とともに、知的交流の実態について検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文化外交研究の方法論はまだ未開拓の分野であるが、少しづつ形を作っていけるように努力している。 第一に、文化と外交の接点である。この辺りはあいまいに議論されることが多いが、基本的に公的な政策とリンクしていない場合にはそれは国際交流の枠を出ない。その方向付けと意味づけが重要である。第二に、外交の原点であるが、様々な交流の根源には価値規範の交換がある。いわば広義の「対話」そのものが外交であり、文化外交である。第三に、それではそうした交流が意味を持つのはどんな場合であろうか。価値の創造には何が不可欠なのであろうか。現段階で、それはコンテクストであると考えている。第四に、そうしたコンテクストはどのようにして作られるのか。この点については昨年度ドイツ文化外交研究所で議論し、ドイツではそれを「枠組み」と称しているという回答を得た。別な表現では「ストーリー作り」といってもよい。第五に、しかしこの種のストーリーつくりには一般論はないように思われる。国同士の関係や個性によってその在り方は多様だ。したがってどのような形で固有の文化を概念化していくのか、という点がポイントとなる。第六に、そのために各国の政策志向、対日本イメージ等の調査は不可欠である。もっとも効果的な対応は、外交や安全保障をめぐる基層文化をどのように理解し、性格付けし、政策に生かしていくのかということである。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の昨年度の成果を踏まえて、本年度はパリで知的交流の大規模なシンポジウムを開催予定である。パリ日本文化会館、ソルボンヌなどでの数日間にわたるシンポジウムを開催する予定である。文字通り「対話」である。幸い国際交流基金・外務省による日仏外交160周年を記念した「ジャポニズム」という周年行事が今年七月から来年二月まで開催予定であるが、本研究プロジェクトは国際交流資金との共催で12月上旬にパリで4日にわたり、大掛かりな知的交流事業としてシンポジウムをパリで開催する予定である。日本からは10人程度来仏し、意見交換を行う。 例年通り、年に数回程度研究会を開催する。国際関係史学会、グローバル・ガバナンス学会と渡邊が関係する学会との共催での開催も念頭に置いている。文化外交の枠組みについての大枠の分析枠組みを確立し、夏ごろから論文集を準備するとともに、渡邊の単著も準備したいと思っている。 6月にはミラノを訪問し、ミラノ大学で知的交流・学術交流の会議に出席し、意見交換するとともに、今年はとくに再度ドイツを訪問し、ベルリン文化外交研究所を訪れて意見交換する予定である。またアメリカのパブリックディプロマシーについての研究交流も進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
3月下旬に中国への出張を予定していたが、家族の健康上の理由により、日本を離れることができなくなったため、出張予定を次年度に延期し、その分の経費を次年度に使用することとした。
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Research Products
(10 results)