2018 Fiscal Year Research-status Report
モノ、カネ、ヒトの自由化が国内団体の政治力に与える再帰的影響の研究
Project/Area Number |
16K03521
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
鈴木 一敏 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (90550963)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨田 晃正 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (30781679)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 自由化 / グローバル化 / 業界団体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「国境を越えた経済活動の自由化」が「国内業界団体の政治力」に与える変化を分析することで、現在までの「自由化」が、将来の「自由化」「グローバル化」に再帰的に与える影響の諸相を明らかにする。ある時点の貿易自由化は、国内行為者の利害関心、経済状況、産業内構成の変化などを通じて、自由化賛成派・反対派それぞれの政治力を変化させ、将来の自由化政策策定にも影響を与える。その際、モノ、カネ、ヒトそれぞれの自由化が異なる効果を持つう え、それぞれの自由化が他の自由化の政治過程に影響するなど、そのメカニズムは動的かつ複雑である。これを整理することで、グローバル化自体の持つ国内政治的な影響を理解することが目的である。 元々の計画では、保険業界などのサービス業、造船、電機、自動車関連などの製造業、農業など幅広い業界の団体を比較する予定であった。しかし、29年度、30年度の調査によって、予想以上に細かな状況が団体の利害の凝集性に影響することが分かってきた。たとえば、同じアパレル産業の内部であっても、商品や市場の特性によって、業界のグローバル化の様態も、そこから団体が受けた影響も、団体の対応も大きく異なることが分かった。 そこで研究協力者(30年度途中より分担者)と議論し、調査対象を繊維アパレルを中心とした軽工業に絞りこんで新たな比較分析を計画し、それをもとに、業界紙などの資料調査および聞き取り調査を開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
既に成果の一部を学術雑誌に公表するなど、予定よりも進んでいる部分もある。しかし、調査研究を進めるうちに、業界団体の政治力の変化を観察するうえで、業界または品目ごとの市場の状況や商品の特性などのかなり具体的な事項について考慮に入れる必要性が予想以上に大きいことが分かってきた。分析対象とする事例を新たに選定して入れ替える必要があり、また、そのぞれぞれについて事前の計画よりも綿密な事前調査が必要になった。このため、事前に計画していた件数の調査が完了できておらず、今年度に限って言うと遅れている面がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
上述のように予定数の調査を完了できなかったので、研究期間を一年延長するとともに、研究分担者を追加し、事例の調査および分析の作業を分担することとした。業界の商品や市場特性の違いが予想以上に団体内政治に強く影響していることが分かったので、対象とする業界をこれまで主に調査してきた事例と比較的特性が似ていると思われる軽工業に絞り、比較を行うことにした。手袋、帽子、デニム、制服などそれぞれの業界団体が、グローバル化から受けた影響を、分担者と手分けして調査する予定を立てた。これらの業界はいずれも軽工業に分類されるが、輸入(モノ)、海外投資(カネ)、外国人労働力(ヒト)の移動が活発化した時期や程度に違いがある。調査終了後に、この違いに着目した比較分析を行い、学会発表および共著での出版を計画している。
|
Causes of Carryover |
研究を進めるうちに、業界の市場特性など、より詳細な事項についても調査する必要があることが分かった。これに対応するために、事例研究の対象を再検討して組み替えたため、調査旅費の実施が遅れたのが、次年度使用額が生じた主たる理由である。 31年度は研究分担者と手分けをして、新たな計画に基づいて調査を行う。アパレル産業の4つの業界と関連する団体について、文献調査(国会図書館における業界紙バックナンバー等の調査)、実地調査(専務理事や業界の経営者等に対するインタビュー)を行うために執行する予定である。 繰越額のおよそ半額の30万円を分担者に配分し、各自4回程度の調査旅費(6-7万円×4)、国会図書館までの交通費およびコピー代への支出を主に見込んでいる。
|