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2016 Fiscal Year Research-status Report

パリ合意の実効性―京都議定書後継枠組みの行方

Research Project

Project/Area Number 16K03525
Research InstitutionThe University of Shimane

Principal Investigator

沖村 理史  島根県立大学, 総合政策学部, 教授 (50453197)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2021-03-31
Keywords気候変動問題 / 国際環境制度 / 実効性
Outline of Annual Research Achievements

先進国に対する2008-12年の温室効果ガス排出量の数値目標を定めた京都議定書では、2013年以降の規定が定められていなかったため、京都議定書が発効した2005年以降、国際交渉が続けられてきた。当初交渉の期限とされていた2009年の気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)では、各国の首脳級が参加した交渉は決裂した。そのため、国際的な気候変動対策の不透明性が高まり、数値目標失効による気候変動ガバナンスの機能低下が懸念された。その後、2015年の気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)を新たな交渉期限として、国際交渉は改めて仕切り直され、成立したのが2020年以降の気候変動ガバナンスを定めたパリ協定である。
本研究対象となる、気候変動ガバナンスの中心となるパリ協定は、米国の不参加や発展途上国への規制の緩さなどの京都議定書の実効力の弱さを改める新たな法的拘束力を持つ国際制度として成立した。本研究を申請する際に提出した研究計画調書作成時(2015年11月)は、パリ協定の成立間近の時期であったため、本研究は、パリ協定の成立を前提とし、パリ合意の実効性と気候変動ガバナンスの変容についての実証分析を行うことを研究目的に設定した。そこで、調査代表者はまず気候変動ガバナンスにおけるパリ協定の位置づけを整理した上で、補助機関会合と気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)に参加し、政府間交渉で模索されているパリ協定の詳細ルールの制度設計の決定過程、及び交渉における主要国のスタンスについて情報収集と分析を行った。COP22の会期中にパリ協定は発効したが、詳細ルールは交渉が始まった段階であり、COP24までに決定することとされ、パリ協定の実効性は今後の交渉と各国の気候変動政策を踏まえて検討することが明らかとなった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

平成28年度は、5月に開催された気候変動枠組条約パリ協定作業部会と、11月に開催された気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)に参加し、事例分析に必要な情報収集に努めた。具体的には、パリ協定の詳細を定める実施ルールの制度設計を通じて、グローバルな気候変動ガバナンスシステムをどのように設定するのか、政府間交渉会議で議論されている内容を調査した。この実態調査と主要国の国内対策に関する文献調査を通じて、パリ協定の実効性を国際社会がどのように担保していこうとしているのか、検討した。
その上で、これまでの研究成果を踏まえ、京都議定書成立後の気候変動ガバナンスの課題とパリ協定の特徴を整理し、気候変動ガバナンスの成立経緯におけるパリ協定の位置づけを分析した。その成果については、平成28年度中に論文にまとめ、刊行した。また、パリ協定成立に至る気候変動交渉においては、発展途上国も大きな役割を果たした。しかし、発展途上国の利害関係の多様化を踏まえ、発展途上国は以前のような一枚岩の交渉ポジションではなく、多様な交渉ポジションを取るように変化している、そこで、多様化する発展途上国内のサブ交渉グループを社会経済面と交渉におけるスタンスから分類し、各サブ交渉グループの立場について検討した。その成果についても、平成28年度中に論文にまとめ、刊行した。
このように、パリ協定の実効性を検討する上で、気候変動ガバナンスの変容の状況について、多様な観点から調査を行うと共に、その研究成果を発表しているため、おおむね順調に進展していると評価できる。

Strategy for Future Research Activity

引き続き、気候変動枠組条約の条約交渉に参加し、条約交渉の行方をその最前線で調査すると共に、交渉に参加している多様なステークホルダーの主張に関する情報収集を行う。具体的には、気候変動ガバナンスシステムの制度設計が議論されている気候変動枠組条約締約国会議や、パリ協定の詳細ルールを検討している作業部会に参加し、政府間交渉の内容を取材する予定である。また、同時並行して、主要なステークホルダーのパリ協定に対する立場と政策実施についても文献調査や実態調査を行う。これにより、パリ協定の実効性についての、現時点での一定の見解をまとめ、気候変動ガバナンスがどの程度機能するのか、評価分析を進める予定である。
平成29年度は、昨年度に引き続き、気候変動枠組条約第23回締約国会議(COP23)に参加し、パリ協定の詳細ルールの制度設計やパリ協定に批判的な言動が見られたトランプ政権が他国に与える影響について、取材する予定である。そこでは、パリ協定の詳細ルールの調査に加え、主に米国の交渉参加者から米国内の気候変動政策に関する議論の状況について聞き取り調査を行う予定である。また、同時並行して気候変動ガバナンスや国内、地域レベルでの気候変動政策決定過程に関する文献調査も行う。したがって、研究費の多くは旅費に用いられ、一部は文献調査に必要な書籍、論文購入に充てる予定である。

  • Research Products

    (2 results)

All 2017

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results,  Open Access: 2 results,  Acknowledgement Compliant: 2 results)

  • [Journal Article] 「気候変動交渉における発展途上国の交渉グループの立場」2017

    • Author(s)
      沖村理史
    • Journal Title

      『環境経済・政策研究』

      Volume: 10(1) Pages: 59-62

    • Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
  • [Journal Article] 「気候ガバナンスにおけるパリ協定の位置づけ」2017

    • Author(s)
      沖村理史
    • Journal Title

      『総合政策論叢』

      Volume: 33 Pages: 9-24

    • Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant

URL: 

Published: 2018-01-16  

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