2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K03525
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Research Institution | The University of Shimane |
Principal Investigator |
沖村 理史 島根県立大学, 総合政策学部, 教授 (50453197)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 気候変動問題 / 国際制度 / 実効性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の対象となる2020年以降の気候変動ガバナンスを定めたパリ協定は、2015年の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で定められ、わずか1年以内となる2016年に発効した。パリ協定は、気候変動ガバナンスに関するポスト2013年体制の交渉が2009年のコペンハーゲン会議で頓挫したことを受け、アメリカの不参加や発展途上国への規制の緩さなどの京都議定書の実効力の弱さを改める新たな法的拘束力を持つ国際制度として成立し、アメリカを含むほぼ全ての先進国と、中国、インド、ブラジル等を含む多くの発展途上国が批准し、現時点で176か国が批准している。パリ協定交渉の最終盤の段階で申請した本研究は、パリ協定の成立を前提とし、パリ合意の実効性と気候変動ガバナンスの変容に関する実証分析を研究目的として設定した。 2017年に就任したトランプ米大統領は、2017年6月にパリ協定から脱退を表明し、パリ協定の実効性が危ぶまれることになった。また、トランプ政権による政策転換は2018年に開催される国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)でパリ協定の詳細ルールに合意すべく行われている国際交渉にも大きな影を落とすこととなった。そこで平成29年度は、トランプ政権の気候変動外交に関する文献調査を行い、その具体的な内容を明らかにすることを目指した。その上で、暫定的ながら、ブッシュ政権の京都議定書離脱とトランプ政権のパリ協定離脱の比較を行い、気候変動ガバナンスに与える影響について学会報告した。また、トランプ政権の気候変動外交を探るため、国連気候変動枠組条約第23回締約国会議(COP23)に参加し、パリ協定の実効性に関する評価を行う上での実態調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、2017年6月にトランプ大統領がパリ協定から脱退を表明し、パリ協定の実効性が危ぶまれることになったため、トランプ政権の気候変動外交に関する文献調査を行い、その具体的な内容を明らかにすることを目指した。また、5月に開催された国連気候変動枠組条約パリ協定作業部会と、11月に開催された国連気候変動枠組条約第23回締約国会議(COP23)に参加し、事例分析に必要な情報収集に努めた。具体的には、パリ協定の詳細を定める実施ルールの制度設計を通じて、グローバルな気候変動ガバナンスシステムをどのように設定するのか、政府間交渉会議で議論されている内容を調査した。この実態調査を踏まえ、パリ協定の実効性を国際社会がどのように担保していこうとしているのか、検討した。 その上で、ブッシュ政権の京都議定書離脱とトランプ政権のパリ協定離脱の比較と気候変動ガバナンスへの影響について、9月に開催された環境経済・政策学会で報告した。また、トランプ政権の気候変動外交が国際的な気候変動政策に与える影響に関する小論もまとめ、発表した。 このように、パリ協定の実効性を検討する上で、気候変動ガバナンスの制度設計と変容の状況について、現実に展開している国際社会の動きを丹念に調査すると共に、その研究成果を発表しているため、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、国連気候変動枠組条約の国際交渉に参加し、気候変動ガバナンスの制度設計の行方をその最前線で調査すると共に、国際交渉に参加している多様なステークホルダーの主張に関する情報収集を行う。具体的には、気候変動ガバナンスシステムの制度設計が議論されている国連気候変動枠組条約締約国会議や、パリ協定の詳細ルールを検討している作業部会に参加し、政府間交渉の内容を取材する予定である。また、同時並行して、トランプ政権を含む主要なステークホルダーのパリ協定に対する立場と政策実施についても文献調査や実態調査を行う。これにより、パリ協定の実効性についての、現時点での一定の見解をまとめ、気候変動ガバナンスがどの程度機能するのか、評価分析を進める予定である。 平成30年度は、昨年度に引き続き、国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)に参加し、パリ協定の詳細ルールの制度設計をめぐる国際交渉を参与観察するとともに、パリ協定に批判的なトランプ政権が他国に与える影響についても調査を行う。国際交渉の現場ではパリ協定の詳細ルールの調査に加え、主に米国の交渉参加者から米国内の気候変動政策に関する議論の状況について聞き取り調査を行う予定である。また、同時並行して気候変動ガバナンスや国内、地域レベルでの気候変動政策決定過程に関する文献調査も行う。したがって、研究費の多くは旅費に用いられ、一部は文献調査に必要な書籍、論文購入に充てる予定である。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画でも予定していた学会発表が、旅費がかかる東日本ではなく、研究代表者の本務校がある西日本で開催されたため、多少予算が余った。また、平成29年度に参加した国連気候変動枠組条約第23回締約国会議(COP23)は、議長国がフィジーであったため、議長国までの旅費を多めに見積もっていた。しかし、実際には会議場や宿泊施設の関係から、ドイツで行われたため、多少予算が余った。この予算は、平成30年度に開催されるポーランドでの締約国会議と平成31年度にラテンアメリカで開催される締約国会議への旅費に充当することとしたい。
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Research Products
(2 results)