2018 Fiscal Year Research-status Report
EU地域政策とクロススケールガバナンス:EUドナウ戦略の研究
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16K03531
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
柑本 英雄 日本大学, 法学部, 教授 (00308230)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ガバナンス / スケール / マクロリージョン / 領域的結束 / ドナウ / EU |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ドナウ川集水域においてEU主導型のクロススケールガバナンスモデルが形成され、EUの領域的結束が強化されているとの仮説をたてている。「EUドナウ戦略(EUSDR)」を事例にこの仮説を立証する本研究の3年度目となる本年度は、前年度後半に行った2度のハンガリー現地調査(①EUSDR年次総会出席(2017年10月)、②EUSDRおよびEGTC調査(2018年3月))のフォローアップと、日本大学法学部図書館の文献データベースを利用し、regionnessやfunctional regionなど関連英語文献の収集と読み込みを実施した。 前年度調査①で得た次期マクロリージョン戦略(Post 2020)の議論については、EUやEUSDR構成国家・地域の各担当者や研究者、2014年から研究交流を続けている。また、Central European Service for Cross-Border Initiatives(CESCI)事務局長Gyula Ocskay氏と、インターネットを通じて打ち合わせも継続して行った。また、調査②でマクロリージョン戦略に関する意見交換を行ったオーストリア連邦政府持続可能・観光省のEUSDR 担当官僚Roland Arbter氏とも、メールによるフォローアップを行った。 本年度の成果として、現地調査で関係者と重ねたインタビューや議論、文献調査による理論研究の結果、ハンガリー国政府が、さまざまな理由からEU主導型の越境協力枠組みであるEUSDRやEGTCを利用しているのではないかとの下位仮説から、本研究の主たる仮説を補給することができるのではないかとの結論に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外現地調査については、前述のように前年度に2度実施しているので、本年度は実施していない。ただし、これまでの現地調査や理論の読み込みを通じて得た知見について、本研究課題の研究協力者である立命館大学の田中宏特任教授(ハンガリー経済の専門家)と議論を常に重ねており、全体として順調に進んでいる。その議論の成果は、田中特任教授により論文「EUドナウマクロリージョン戦略のなかの欧州領域協力団体:EGTC」(2019年発表予定)としてまとめられている。 本来、本年度で本研究課題は終了の予定であったが、昨年度秋の段階で、CESCI事務局長Ocskay氏との打ち合わせの中で、2019年4月25-26日にブダペストでCESCI設立10周年記念国際コンフェレンスが設定されることが判明した。さらに、同氏から、EUSDRやEGTCに関する研究代表者のこれまでの知見を、コンフェレンス初日パネル(Panel3 Cross-Border Governance)においてCESCI関係者に共有してほしいとの申し出を受けた。このEUSDR地域の専門家(マクロリージョンおよびクロスボーダーリージョンの運営実務家、ハンガリーおよび周辺国政府関係省庁官僚、欧州連合および欧州評議会専門官、研究者)から、本研究への批判やアドバイスの提供を受ける最良の機会であると考え、補助事業期間を1年延長し、さらに深い仮説立証の知見を得ることを目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように、CESCI設立10周年国際コンフェレンスにてクロススケールガバナンスについての研究成果報告を行う。当該パネルには、ルクセンブルク大学のEU研究者、EU地域委員会(CoR)のEGTC担当者、ドイツ・ポーランド間のCBC担当者も登壇するので、コンフェレンス終了後もコンタクトを取り意見交換を行う。 さらに、同コンフェレンスの報告者として出席が予定されているEU都市計画研究の第一人者Andreas Faludi教授の論文は、これまで拙著の中で何度も引用しており、会場で互いの報告について議論し理論を深めたい。なお、すでにFaludi教授にはその旨連絡し、快諾をいただき、研究代表者が本年度発表した本研究課題の研究成果の英語論稿2本「Toward a New Analytical Framework of Sub-regions: Cross-scale Regional Governance」「The Parallel Evolution of Functional Macro-regions and Cross-scale Regional Governance as Emerging Political Instruments in the North Sea Region」(「10.研究発表」欄掲載)を教授に送付し、コメントをいただくことについても打ち合わせ済みである。 また、同コンフェレンスのパネリスト計26名の全報告文書をCESCI事務局長Ocskay氏から送付いただける旨、快諾いただいている。各報告の中で議論、引用されている文献資料もしっかりとフォローし、事例と理論の理解を深めたい。その上で、予算の許す範囲でブダペストを再訪し、Ocskay氏に本研究成果としてまとめる英語論文を提示し、CESCI研究所員らとも議論を深め、本研究課題の仮説を明確に立証したい。
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Causes of Carryover |
補助事業の目的をより精緻に達成するため、2019年4月に開催されるCESCI国際会議へ参加することにしたため。これにより、EUドナウ戦略のリサーチプロジェクトに関わる専門家や、地方政府の越境協力枠組みEGTC担当者へのヒアリング調査を行い、EU主導型のガバナンス形成によってEUの領域的結束が強化されているとの立論と、クロススケールガバナンスモデルの類型化を完成させる。
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Research Products
(1 results)
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[Book] The New International Relations of Sub-Regionalism: Asia and Europe2018
Author(s)
Hidetoshi Taga, Seiichi Igarashi (eds), Hidetoshi Taga, Seiichi Igarashi, Hideo Kojimoto, Yuji Morikawa, Kosum Saichan, Hiroshi Komatsu, Ekamol Saichan, Tetsu Sadotomo, Kenji Nakayama, Yoichiro Usui, Kazu Takahashi, Yoshitaka Ota, Ann Bell
Total Pages
240
Publisher
Routledge
ISBN
9781138093256