2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K03535
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
本多 美樹 法政大学, 法学部, 教授 (30572995)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 平和構築 / 国連 / 国際規範・価値 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、平和構築活動における女性の参画が特にアジア地域の弱者の能力強化(エンパワーメント)や社会の再建にどの程度影響を与えているのかについて明らかにすることである。 2016年度は、平和構築活動への女性の参画に関する累次の国連安保理決議を整理した。研究成果の一部として、山田満編著『東南アジアの紛争予防と「人間の安全保障」:武力紛争、難民、災害、社会的排除への対応と解決に向けて』(明石書店、2016年度)の中で、「平和構築の新たな潮流と『人間の安全保障』:ジェンダー視座の導入に注目して」を執筆した。 2017年度は、アジアにおける平和構築における女性の参画の現状についての資料収集と情報交換をタイ、シンガポール、ニューヨークでおこなった。また、平和構築活動において、法や規範・価値(正義、民主主義、人権、ジェンダーなど)がどの程度共有されているのかについて論理的な考察も進めた。平和構築活動に関わる多様なアクター間で、国連が進めてきた秩序の回復と維持のための法や価値規範(正義、民主主義、人権、ジェンダーなど)の伝播がローカルなレベルでどの程度共有されているのか、また、活動に関与するアクター間で共通の価値規範を共有することの難しさについて考察した。研究成果の一部として、「安全保障概念の多様化と国連安保理決議」『アジア太平洋討究 白石昌也教授退職記念号』31号、早稲田大学アジア太平洋研究センター、2018年3月、121‐138頁のほか、日本国際平和構築協会研究大会において、「国際秩序の維持と平和構築戦略としての『法の支配』:普遍的な価値基準として法機能は共有されうるのか?」『平和活動における法の支配の変遷』(東京大学駒場キャンパス、2017年12月2日)で報告をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アジアの平和構築活動におけるジェンダーの主流化状況と、活動に関わる様々な行為主体(アクター)間でのジェンダーを含む規範・価値、法秩序の共有状況に関する資料の整理と論理的考察は進めることができたが、対象となる国を絞り切れていないため、現地の状況調査という点で遅れている。最終年度はこの点に留意しながら研究を進めたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度に整理を行った安全保障分野におけるジェンダーの主流化についての考察と、2017年度におこなった平和構築活動に関与する様々なアクター間の法規範・価値の共有についての考察、また、アジアにおける平和構築活動への女性の参画状況の資料収集を基に、最終年度は対象となる国を絞って状況を調査する予定である。 なお、研究成果の一部として、2018年5月にグローバル・ガバナンス学会にて、「国際秩序の安定化のための平和構築活動を考える:価値規範の共有をめぐる多様なアクターの関与と調整に注目して」を報告する。7月にローマでおこなわれるAcademic Council on the United Nations System (ACUNS)では、“Building peace or international security?: Challenges for locating values and norms between the global and the local”というタイトルで、国連による国際秩序の回復・維持のための平和活動において、国際規範がローカルにどのように理解され共有されているのかについて、その現状と課題を報告する。また、英文書籍の出版(共著)を予定している。書籍には、本研究課題の内容に沿った論文を執筆する予定である。
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Causes of Carryover |
2017年度には、アジア地域での平和構築活動におけるジェンダーの主流化について資料収集と情報交換をタイ、シンガポール、ニューヨークでおこなったが、対象国を絞り切れず、現地での調査を最終年度に持ち越したため、次年度使用額が生じた。最終年度である2018年度は、対象国での調査と、ローマでおこなわれる国際学会での研究発表のために持ち越した予算を使用する予定である。
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Research Products
(5 results)