2018 Fiscal Year Annual Research Report
Fact-Finding and Reconciliation: the deconstruction of the offenders and the protection of the victims in the Issue of Comfort Women
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16K03537
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Research Institution | International University of Japan |
Principal Investigator |
熊谷 奈緒子 国際大学, 国際関係学研究科, 准教授(移行) (10598668)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 和解 / 構造的権力 / 謝罪 / 慰安婦問題 / 歴史認識 / 赦し |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日韓慰安婦問題を中心に、加害・被害事実認識における複眼的視点が加害者側と被害者側の間にもたらす相克と協調、そしてそれらの和解への影響を分析した。慰安婦像設置の問題、2015年日韓政府合意の「和解・癒し」財団の運営と解散の事例を中心に、慰安婦問題研究の進展に連れて明らかになる加害と被害の相対化が、加害側被害側双方の和解姿勢を弱めたことを明らかにした。複眼的視点への反発としての被害者像の偶像化の現象は、元慰安婦の多様な実相の把握や、財団による現金支給和解策遂行を困難にした。また、被害者の自発的行動の背後にある構造的権力の下にある非自発的意図の認識において、加害側は被害者の「行動」を「意図」よりも重視することで被害認識を低下させ、それが両者の対立が先鋭化した。オランダの慰安婦の事例研究では、オランダの植民地支配の歴史を踏まえた複眼的視点に基づくオランダ側の和解姿勢は、あくまでも加害側の罪と責任の絶対性が前提となって可能であることを解明した。 また、慰安婦問題以外の事例の和解策において、国際刑事裁判は、加害者の特定とその加害行為のみに注目するため、加害被害の区別を明確化するが、それが社会分断を引き起こしうること、また一方で、真相究明委員会の和解策は、南アフリカやグアテマラの事例のように、加害行為の社会的制度的背景をも明らかにするが、個人の責任が曖昧になり和解を阻害しうることを明らかにした。 さらに、近代国際法で裁けない過去の不正義を政治的道義的に正す試みにおいて、不正義的行為の多面性が加害被害の各強調の材料とされ対立が先鋭化したことを、奴隷制や植民地支配に対する謝罪要求をめぐる国連での議論(2001年の反人種主義・差別撤廃世界会議)を事例に、解明した。 しかしすべての事例、和解策において、謝罪補償の在り方の対立は先鋭化しても、被害事実の理解は広まるという効果をも本研究は見出した。
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Research Products
(7 results)