2017 Fiscal Year Research-status Report
アラブ連盟をめぐる「アラブ外交」の成立に関する研究
Project/Area Number |
16K03538
|
Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
北澤 義之 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (90257767)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | アラブナショナリズム / アラブ連盟 / 王政 / シオニズム / 事務総長 / 仲介 / アラビア半島 |
Outline of Annual Research Achievements |
アラブ連盟とアラブ外交に関して、国内研究機関における文献資料調査と海外研究機関における資料調査を行った。国内においては、アジア経済研究所と国会図書館を中心に、国際組織間の交流と資料保持に注目して国連資料や欧米の国際政治関連の資料から、アラブ連盟の外交資料を調査した。 海外における資料調査は(1)英国のロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)図書館と(2)アラブ連盟本部図書館、において調査を行った。 昨年に引き続いてアラブ連盟図書館において、アラブ諸国関係の初期の展開、特にヨルダンの西岸政策(エルサレムを中心とする西岸併合のためのシオニストとヨルダン王室の関係)に関する重要な資料を調査することができた。同問題をめぐるアラブ連盟事務総長の調停の特徴やヨーロッパ諸国、国連とアラブ連盟、アラブ諸国の関係などについても重要な事実関係を知ることができた。 湾岸を中心としたアラブ外交の調査のために訪問したオマーンにおいては、オマーン外務省の担当官、スルタンカーブース大学教授からオマーンの外交一般の特徴について聴取した。また、日本大使館の担当官からもオマーンの外交的傾向についての意見を聴取した。全体的にオマーンの外交的姿勢は穏健で調整的な役割を果たしていることが分かった。対照的事例として近年、GCC内に外交的に孤立しているカタルと対比する議論はオマーン外交の特徴を理解するうえで、参考になった。 アラブ連盟の外交的役割を理解するときに、アラビア半島のGCC諸国はほぼ一枚岩のように扱われることが多いが、特に近年はその関係性に変化が見えている点が重要であることを認識することができた。この調査からは、アラブ外交を東地中海地域、北アフリカ地域、アラビア半島地域の観点から検討することの重要性と注意点についての知見を得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アラブ連盟図書館には、特に連盟設立初期のアラブ外交関連の外交資料が特に充実しており、アラブ連盟をめぐるアラブ外交理解のために極めて有用であることを再確認した。特に周辺アラブとイスラエル(および中心的シオニスト)との関係、パレスチナ問題へのアラブの対応、エジプトをめぐるアラブ外交などに関する資料が充実していることを確認した。その一方、アラブ連盟本部移転以降の資料が当初の見込みより少ないか、整理が遅れていること、また近年の政治情勢(エジプト政府の治安強化)の影響を受けて、以前より利用手続きが厳しくなっていることから、今後の同図書館の利用に多少の懸念を持って臨まざるを得ない。 他方、SOASでの資料調査では、アラブ外交に関する二次的研究資料に加えて、当初の予想より多くのアラブ外交に関する資料があることを確認できた。一昨年の米議会図書館の資料とも合わせて、必ずしも欧米の研究二次資料だけでなく、一次資料も多く所蔵していること、テーマによってはアラブ諸国の現地では散逸している資料を入手することも可能であることが確認できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
治安情勢の調査に関する影響の懸念はあるものの、最終年度の調査の中心はアラブ連盟における資料調査となる。ロンドン大学SOASや米議会図書館でのアラブ連盟及びアラブ外交に関する二次資料の補足的調査や一次資料の調査を継続する。 そのうえで、最終年度においてイスラエルの大学・研究機関(ヘブライ大学、テルアビブ大学、ハイファ大学)における資料調査・聞き取り調査を加えたい。いうまでもなくイスラエルはアラブ諸国の敵対国家と位置付けられてきた。そのためイスラエルにおいてもアラブ諸国に関する戦略的立場からの研究は進んでいる。イスラエル側からのアラブ連盟やアラブ外交に関する独自の資料とともにパレスチナやアラブ側が保持していない重要なアラブ側の一次資料を保持している可能性がある(多くはヘブライ語に翻訳されて保存)。ただ今回の調査は、主に二次的な資料に絞って実施する。アラブ側に欠損している資料を含む本格的な資料調査に関しては、また別の機会に実施したい。 またエジプトと同じく、イスラエルの場合は治安情勢の影響もありうるので、特に問題がある場合には、日本国内の研究機関(JETRO)アジア経済研究所、国会図書館、東京大学東洋文化研究所、東京外国語大学、中東調査会などの資料を丹念に調査することで対応したい。
|