2017 Fiscal Year Research-status Report
アウトサイドオプション付チープトークモデルにおける二次元利益相反と情報伝達の関係
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16K03549
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
千葉 早織 京都大学, 経済学研究科, 講師 (50770880)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 情報伝達 / 利益相反 / 相関関係 / 情報構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
基本モデル(オプション付きチープトークモデル)の分析については、離散モデルの分析に進展があった。H28年度において、異なるアクションのペイオフの間に負相関があると、各次元(アクションバイアスとパンダリング)の利益相反と情報伝達が非単調であることを示したが、H29年度は更に、この負相関が情報伝達の促進に繋がり得る、との結果を得た。関連して、権限の委譲の問題についても、アクションのペイオフ間の相関と最適な権限委譲といった既存研究(Dessein, 2002; Alonso & Matouschek, 2008他)で研究されていない問題を分析し、相関が-1に近い程、プリンシパルが意思決定権限を情報を持つエージェントに委譲する利益は少ないという新たな結果を得た。 連続モデルについては、研究協力者と共に、室内実験(laboratori experiment)の準備を進めた。チープトークの室内実験が確立されていないことから、先ずは、既存研究(Battaglini & Makarov 2014他)を参考に、復旦大学にてパイロット実験を行った。 加えて、グループ意思決定、携帯アプリ市場における情報構造、といった応用問題にも取り組んだ。 これらの基本モデル分析や応用問題分析の結果を、原稿としてまとめ、国内外の研究学会や研究機関(32nd Annual Congress of the European Economic Association, The 2nd Joint Economics Symposium of 4 Leading Universities in Taiwan and Japan)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基本モデル(アウトサイドオプション付きチープトークモデル)の離散モデルについて、2アクション、4ステートを想定し、異なるアクションのペイオフの間の相関パラメーターと情報伝達の関係、その厚生への影響の分析を済ませた。同モデルを用い、権限委譲がプリンシパルに益する条件を特徴づけた。連続モデルとしては、Uniform quadraticモデルを更に簡略化したモデルを作成した上で、パイロット実験を行った。 一方、応用問題であるグループ意思決定問題については、ステートも私的情報も離散の一様分布で、、プレイヤーが逐次に発言する動学モデルを用いて、コミュニケーションカスケード(皆が同じ言葉を繰り返す現象)均衡の存在を示した。 携帯アプリ市場における情報構造の問題についても、良い販売者、悪い販売者、消費者によるコミュニケ―ションゲームを構築。良い販売者の行動を固定し、アプリケーションタイトルの字数を制限(アップル社による新ルール)すると、悪い販売者が商品内容を誇張し消費者に被害を与える損害を減らすことができるものの、良い販売者からの情報伝達が制約され、総合的には消費者を害する可能性がある、との結論を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
離散のアウトサイド付きチープトークモデルについては、Nアクション、Mステートの一般化モデルを構築し、加えて、決定権限の委譲、最適な情報構造メカニズムといった応用問題の分析を深める。 連続のアウトサイド付きチープトークモデルについては、室内実験を実施し、Uniform quadraticモデルで見られた結果(二次元の利益相反がある場合、各利益相反が情報伝達を促進し得る)の頑健性を確認する。更に、一般化モデル(微分可能な凹関数)において、利益相反が情報伝達の促進に繋がる条件を示す。 グループ意思決定のモデルについては、全ての均衡を求め、一般化モデルへ拡張する。携帯アプリ市場のモデルについては、全参加者が戦略的に意思決定を行うなど、より一般的なモデルに拡張する。
平成29年度同様、研究協力者とインターネット上で、研究の成果について報告し合い、加えて、海外の研究協力者や国内外の専門家を訪問し、集中的に研究を進める。適宜、研究成果を取り纏め、国内外の研究学会や研究機関で発表する。取り纏めた成果を、ワーキングペーパーとして発表、或いは国際的に評価の高い査読付き学術雑誌に投稿する。
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Research Products
(6 results)