2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K03551
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小林 照義 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (10387607)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 銀行間ネットワーク / テンポラル・ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、イタリアにおける銀行間取引データを用いたデータ解析を中心に行った。本データはタイムスタンプ付きで個別の銀行取引が匿名で観察できるため、銀行間取引によって形成されるネットワーク構造を詳細に知ることができる。このデータを用いて、以下の3つの研究をプレプリントとして公開した。 一つ目は、翌日物取引によって形成される銀行間ネットワークの日次ダイナミクスの存在をデータから明らかにし、それをモデルによって再現した論文である。そもそもこれまでの先行研究では、銀行間ネットワークには日次レベルで意味あるダイナミクスが存在するとは考えられていなかったが、本研究ではそれが明確に存在することを示し、かつそのダイナミクスが、人間同士のコミュニケーションで形成される社会ネットワークのダイナミクスと酷似している点を初めて明らかにした。 二つ目は、リレーションシップ貸出を統計的に抽出するための手法を提示した論文である。「リレーションシップ貸出」は従来から議論されていたが、その指標は取引回数であったり、取引量の集中度であったりと、ナイーブな指標が使われていた。本論文では、統計的に有意に取引量が多い銀行ペアを抽出することで、より統計的に厳格に基礎付けされたリレーションシップ貸出の定義を提示した。 3つ目は、各銀行の取引パターンが多様な時間スケールで存在することを発見した論文である。これまでの研究でも、営業時間内の取引パターンが存在することは知られていたが、それと同時に日次パターンが存在することを非負値テンソル分解によって示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画の当初では入手不可と思われたデータを入手することができ、それによってネットワーク・データ解析や、そこで得られた結果を説明するためのモデリングを詳細かつ高い精度で行うことが可能になった。 さらに、同データを用いることで、統計的に有意な枝の検定や、テンソル分解の活用など、経済ネットワーク分析において社会ネットワーク分析の考え方が非常に有用であることを一定程度示すことができた。 これらの成果は、ネットワーク科学や社会ネットワークの研究者の協力を得て共同研究を予想以上に推進することができた結果でもある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた結果をベースとし、より汎用性の高い検定手法の開発や、新たなネットワークのダイナミクスの発見、またそれを説明するモデル化を進めて行く。 そのために、ネットワーク科学分野におけるエキスパートとの共同研究を推し進めて行く。
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Causes of Carryover |
ジャーナルの出版費用としてオープンアクセス化の費用に備えていたが、想定よりも時間がかかったため。本年度の前半には出版される可能が高いため、その際に支出予定。
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