2018 Fiscal Year Annual Research Report
Study on nonlinear economic dynamic model with time delays
Project/Area Number |
16K03556
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
松本 昭夫 中央大学, 経済学部, 教授 (50149473)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | delay dynamics / Solow growth model / cournot oligopoly model / fixed delay / distributed delay / NPS pollution / environmental policy / nonlinearitiy |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は経済動学モデルを構築し、二つの異なる時間遅延が動学に及ぼす効果を解析的および数値的に考察を加え、その手法を他分野の動学モデルに応用した。また今後の研究の発展のために点源汚染(Non-Point Source Pollution)に対するモデル分析を行った。 ミクロ経済動学モデルとしてクールノー複占モデルを考察。Howroyd-Russel(1984,JME)の示した時間遅延を持つN企業モデルおける安定性の十分条件をもとに,安定性の必要十分条件を提示した。さらに安定条件が満たされない場合でもモデルの内包する非線形性と時間遅延の相互作用により、極限循環や複雑動学の出現が数値的に確かめられた。マクロ経済動学モデルとして、Solow modelを取り上げ、資本蓄積方程式にKalecki(1935)の意味での生産における懐妊ラグおよび減価償却に関する遅延現象を同時に考察することにより二つの異なる遅延が経済成長に及ぼす影響について考察した。「連続分布遅延」を想定すると、経済変動に対応する循環解が求められた。さらに連続分布遅延の極端なケースと考えられる「固定遅延」を導入すると、一定以上の長さの遅延がある場合には非周期的な変動が生み出されることが確かめられた。今後の進展としてはソローモデルに人的資本を導入した経済成長モデルや最適経済成長モデルのおける遅延の果たす役割について考察を進める予定である。 応用として社会心理学における二個人間のお互いの感情の動きを記述するモデルへの遅延の導入し、複雑な感情の動きに遅延の果たす役割について考察した。さらに数理生物学では古典モデルであるLotka-Volterraモデルにおける遅延効果分析について準備を始めている。また、環境汚染源が特定化できないNPS汚染の動学分析の基礎として、環境課金政策の有効性について考察を加えた。
|