2017 Fiscal Year Research-status Report
一般化されたボランティアのジレンマの理論的・実験的研究
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16K03557
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
瀧澤 弘和 中央大学, 経済学部, 教授 (80297720)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川越 敏司 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (80272277)
山森 哲雄 獨協大学, 経済学部, 准教授 (50552006)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 実験ゲーム理論 / ボランティアのジレンマ / 限定合理性 / 傍観者効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、一般化されたボランティアのジレンマ・ゲームと呼ばれるゲームの理論的・実験的研究である。これは各人が貢献するかどうかを独立に決定し、一定数の貢献がなされたときにのみ、公共財が供給されるというタイプのゲームである。 2017年度は、(1)2016年度の研究内容、すべてのプレーヤー貢献のコストが対称で、同一タイプであると見なせるケースについての論文を投稿し出版することができた(後に報告するKawagoe, T., T. Matsubae, and H. Takizawa 2017がそれである)。 そのうえで、当初の研究計画通り、(2)プレーヤーたちの間に、公共財供給する際の貢献コストが低い「強いタイプ」と貢献コストが高い「弱いタイプ」という2つのタイプが混在している「非対称のケース」に考察を向け、これについての研究を行った。すでに実験は行っており、データは一部を除き、揃っている。ただし、はこだて未来大学で行う予定だった実験は、被験者が思うように集まらず、これについては中止した。 現在はこのケースの論文執筆にとりかかっている。この非対称のケースにおける極限QREをホモトピー・アプローチを用いて解析した結果から得られた「推測」について、研究分担者間でコミュニケーションをとりながら、証明をチェックをしている。すなわち、ホモトピー・アプローチによって計算して特定した主枝から極限QREを特定したところ、これまでの同分野の研究で報告されてきた混合戦略とは異なるナッシュ均衡になることがわかると同時に、それがリスク・ドミナンスの概念と近いものであることがわかったので、その事実を証明しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画において、ボランティアのジレンマ・ゲームの構造の複雑性にしたがって、2016年度がプレーヤーのすべてで公共財貢献コストが等しい「対称的ケース」を扱い、2017年度が公共財貢献コストが低いプレーヤーと高いプレーヤーが混在する「非対称なケース」を扱うことになっていたが、概ねその通りに推移している。 すでに「対称的ケース」についての論文は、実験と理論的結果の両方を含む論文を執筆したうえで、学会発表を経て、ワーキングペーパー化を行い、最終的に出版することができた(後述のKawagoe, T., T. Matsubae and H. Takizawa 2017)。 2017年度の対象である「非対称なケース」については、すでに実験を行ってデータは収集したところである。また、このケースの極限QREの性質について得られた「推測(conjecture)」を証明しようとしているところであり、論文作成に向けて、着々と作業が行われている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでも主に理論研究の方面で当該研究に参加していただいていた松八重泰輔氏を正式に研究分担者として迎え、「非対称のケース」についての理論的分析を早急に終え、実験データを用いて、QREとLevel-kの両方のモデルについて統計的推計を行い、論文を仕上げることである。すでに、2018年6月28日から7月1日にかけてドイツ・ベルリンで開催されるEconomic Science Associationの年次ミーティングで発表することが決まっており、これに向けた作業を行っているところである。
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Causes of Carryover |
(理由) はこだて未来大学で川越氏が予定していた実験について、十分な被験者数を募集することができなかったため、キャンセルすることとした。 (使用計画) 2017年度の分担金については、変更する予定はない。今年度発生した余剰金は新たな実験の実験謝金として使用する予定である。
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Research Products
(9 results)