2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03562
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
清水 和巳 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (20308133)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上條 良夫 高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 教授 (40453972)
大薗 博記 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (50709467)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コンテスト理論 / 実験経済学 / 懲罰 / グループ間競争 |
Outline of Annual Research Achievements |
市場経済社会において,その構成員である個人や集団が互いに競争することが,資源の効率的配分を促し,無駄を抑制することはよく知られている.しかし,その競争がレント・シーキングのために行われるとかえって資源は浪費され,社会的余剰は小さくなってしまう.したがって,レント・シーキングを抑制する方策を検討することは,経済学にとって興味深い対象であるだけではなく,社会的に大きな意味を持つと思われる.本研究の目的は,非生産的なレント・シーキングを抑制する方策を,実験的に検討することにある. 平成28年度は,この研究の基礎となるTullock contestの理論分析を進めると同時に,実験デザインについて詳細に検討し,実験マテリアルの作成を行い,春と秋に下記の【実験1】を行った. 【実験1】 Tullock contestでは,プレイヤーは外生的に決定されたレント獲得のための努力量を決定し,個人の努力量と全体の努力量との兼ね合いで利得が決定される.本実験においては,まずこのTullock contestの理論的内容を実験環境として具体化し,個人の努力量を観察する. そして,この結果をベースラインとし,ここに懲罰機会を追加した.個人の努力量・利得などの情報をフィードバックされたプレイヤーがどのような懲罰行動をとるのか,また,懲罰されたプレイヤー(あるいは懲罰を予想するプレイヤー)がレント・シーキングを控えるのかが,主たる検討対象となった. 【実験1】の実施によって、29年度実施予定の本実験に関する有効な知見が蓄積できた。29年度に向けて、実験プログラムの改善、インストラクションの修正、謝金設定の微調整など、修正すべき点が明確にできた意義は大きいと考える。 加えて、この実験の副産物として興味深い現象が観察され、それに基づいた考察を英文論文としてまとめ、現在、英文査読付き雑誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、実験1を実施することができ、29年度実施予定の本実験に関する有効な知見が蓄積できた。加えて、今年度の実験の副産物として興味深い現象が観察され、それに基づいた考察を英文論文としてまとめ、現在、英文査読付き雑誌に投稿できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、以下の2つの実験を実施する予定である。 【実験2】実験1と実験2の本質的な違いは,実験2においてはレントが内生的に決定される点である(コンテスト理論におけるendogenous prizesに基づいた設定である).ここでは,各プレイヤーの努力がレント自体の増大に貢献するとともに,自らがレントを獲得できる確率も高めることができる.つまり,ここではプレイヤー間の懲罰によって個々の努力量が減少すると,社会的効率性を阻害することになる.実験1において懲罰がレント・シーキングを抑制したとしても,実験2において懲罰が頻発し社会的効率が落ちるのであれば,私的懲罰の適用範囲を注意深く設定する必要があることが示唆される. 【実験3】ここでは,実験1と実験2を組み合わせる.すなわち,各プレイヤーは自己資源を「レント・シーキング」と「レントの生産」へどのように配分するのかを決めなくてはならない.各プレイヤーの配分の決定は「どちらへ配分したほうがより多くのレントを得ることができるのか」という予想だけではなく,「どちらへ配分したほうがより懲罰されないか」という予想にも影響されるだろう.したがって,本実験では,プレイヤーの懲罰がレント生産者とレント・シーカーのどちらに向かうのか,そして,その懲罰が社会的効率性を高める資源配分を促すのかが,主たる検討の対象となろう.企業など現実の組織においては,上記のような2方向(例えば,仕事への熱心な取り組みと上司へのおべっか)への努力配分が一般的に存在すると考えられるので,実験3から得られた結果からは,懲罰とレント・シーキングの関係に対してより外的妥当性の高い知見が得られることが期待できる. この2実験の実施後、結果を分析し論文化する予定である。
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Causes of Carryover |
研究分担者である大薗博記准教授が昨年度後半から在外研究に出たために、彼の配分額である15万円が使用されなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額も今年度の予算と合算して、研究推進の資金とする。
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Research Products
(3 results)