2018 Fiscal Year Research-status Report
プロスペクト理論の妥当性・有用性の分析:大震災と不動産価格への応用
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16K03565
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
生藤 昌子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (60452380)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ヘドニック・アプローチ / 地震リスク / 確率加重関数 / プロスペクト理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生起確率は非常に小さいが一度起きると莫大な経済損失をもたらす大災害リスクに対する経済主体の評価分析に関して、行動経済学理論の整合性の検証を行った。具体的には地震災害リスクがどのように不動産価格に影響を与えるかについて、ヘドニック・アプローチを用いて分析した。差別化された不動産そのものの属性に加え、不動産が立地する地域の魅力度、さらに立地地点近隣の地震災害リスクも考慮し、各不動産の市場価値にどのように影響を与えているかを探るのが目的である。経済主体が公的に得られる地震発生の長期的確率の情報に加えて、ある時点までに発生した地震に誘発される次の地震発生についての短期的な客観的リスクと主観的リスクを区別して、その影響を分析した。長期的リスクについては公表されているデータを用い、短期的リスクは観察された地震データをもとにシミュレーションして導出した。前年度に得られた結果の1. 地震発生の長期的リスクは住宅価格に負の影響を持つ;2. 地震発生の長期的な確率評価に加え、短期的“客観的”リスクは住宅価格への影響はない;3. 地震発生の長期的な確率評価に加えた、短期的、“主観的”リスクは住宅価格へ小さいが負の影響を与える、ついて頑健性の検証を中心に行った。ベースモデルには地域魅力度に関する4変数を用いたが、病院や保育所の数など7変数を加えた。またマクロ経済変数についても個別に検討した。さらに代替的な確率加重関数を用いることにより頑健性の検証を中心に行った。オーストリア、グラーツ大学などで研究報告を行い、国内外の研究者から有益なコメントを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地震リスクや災害リスクが不動産価格に影響を与える既存研究は、実際に生じた災害前後、あるいはリスクに関する情報のアップデート前後の不動産価格の比較をもとに行なっている。それに対して本研究は一定期間の不動産価格への長期的地震確率の影響への分析に加え、過去の地震が短期的に地震発生確率を高めることから、その短期的なリスクの影響にも注目し分析を行うことができた。また、プロスペクト理論についての検証も行い、長期的リスクに加えた短期的確率加重は従来のプロスペクト理論とは異なることを示した。成果はTinbergen Institute のディスカッション・ペーパーとして公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は平成30年度で終了する予定であったが、研究成果を国際学会で発表し、国際ジャーナルへの掲載を目指すために31年度の延長申請をした。
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Causes of Carryover |
30年度に国際学会報告のために旅費として用いる予定であったが、予定通りに参加できず、未使用となった。国際ジャーナル掲載に向けて研究を精緻化するために、国内外いずれかでの研究報告を行いたい。そのための旅費や通信費、投稿費用などに用いる予定である。
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Research Products
(4 results)