2018 Fiscal Year Research-status Report
異なる情報を持つ(非対称情報)プレーヤーによるゲームの協力解(コア解)について
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16K03566
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
野口 光宣 名城大学, 経済学部, 教授 (00208331)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 協力ゲーム / ベイジアンゲーム / 不完全情報ゲーム / タイプ / 本質的ゲーム / 非対称情報 / αコア解の安定性 / リアプノフの定理 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の主な研究課題は、不完全情報協力ゲームのαコア解の安定性について調べることであった。安定性概念としては、フォート(1950)が関数の不動点の安定性を論じるために導入し、ウーとジアン(1962)がNプレーヤー戦略型ゲームのナッシュ均衡に応用したものを、さらに協力ゲーム解にも応用可能なように調整したものを用いた。 不完全情報協力ゲームのモデルとしては、私的情報モデルとしてハルサニーのタイプ概念を用いるミルグロムとウエッバー(1985)のものを用いた。このモデルでは、各プレーヤーが事前的に期待利得を計算し、戦略として自己のタイプごとの行動を選択する。ウーとジアン(1962)はゲームの解がゲームを指定するパラメーターに依存する点に着目し、どのようなパラメーター推定も誤差を含むという認識から、信頼できるゲーム解はパラメーター摂動に対して安定であるはずだと主張し、フォートの安定概念をゲームに応用した。本研究ではプレーヤーの全タイプと、全行動選択に依存する利得関数と、それらの期待値計算を可能にする同時確率分布(情報構造と呼ぶ)の二つのパラメーターで指定され、それぞれがミルグロムとウエッバー型ゲームとなるような族を考えた。完全情報協力ゲームのαコア解の安定性についてはヤン(2017)の先行研究がある。不完全情報下では、利得関数と情報構造を同時に、かつ、αコアが存在する範囲で摂動させる必要がある。このような摂動を実現するゲームの族を定義するために、野口(2014)の純粋戦略αコアの存在定理を用いた。与えられたゲームのαコア解のどのような近傍にも、当該ゲームに十分近いすべてのゲームがαコア解を持つとき、そのゲームは本質的であるといわれる。結論は、利得関数が有界で情報構造が絶対連続ならば、トポロジー的にほとんどすべてのミルグロムとウエッバー型ゲームは本質的であるということである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の「今後の推進方策」で目標設定した、不完全情報Nプレーヤー協力ゲームのαコア解の安定性について肯定的な結論を得ることができ、すでに国際学会で成果を発表し、国際学術雑誌にも投稿済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
不完全情報Nプレーヤー協力ゲームのαコア解の安定性についての投稿済み論文に査読者からのコメントがついた場合、それらと優先的に取り組む。
まだ未着手の結託内情報共有がある場合のαコアの存在問題に取り組む。
野口とゼイム(2006)の一般均衡モデルの安定性について調べる。消費の外部性のある経済の、トポロジー的にほとんどすべてのものが本質的であるというような結論が出せる可能性がある。ただし、ゲームの場合と違って消費空間がノンコンパクトになるので、新たに解決すべき数学的問題に直面することが予想される。
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Causes of Carryover |
(理由)副学長職ならびに常勤理事職が多忙を極め、予定していた国際学会等に参加できなかった。 (使用計画) 設備備品費の明細(千円):経済学関連書籍代、100 計 100 旅費等の明細(千円):国外学会参加(エコノメトリック・ソサイエティ―等)800、英文校閲 90、計 890
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Research Products
(1 results)