2016 Fiscal Year Research-status Report
交渉と情報の透明性がインセンティブに与える影響の解明
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16K03569
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
清滝 ふみ 近畿大学, 経済学部, 教授 (30319751)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 提携交渉 / インセンティブ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は2つの研究に取り組んだ。 まず、生産に不可欠な資産をもつプリンシパル(企業)と2人のエージェント(労働者)との間の賃金交渉モデルを構築した。第1ステージでエージェントが個別に交渉するか団体で交渉するかを選択し、第2ステージでランダムに選ばれた提案者が利益の分配について提案するという形で、団体交渉か個別交渉かの内生化を行った。そして、団体交渉あるいは個別交渉が選ばれる必要十分条件明らかにした。この研究は、エージェントが交渉のやり方(団体か個別か)を選べる点で実際の労使交渉を反映しており、提携交渉の提案者と利益の分け方の提案者が異なる可能性があるという点で理論的に貢献のあるものである。また提携間の外部性やエージェント間のの代替性・補完性が提携交渉に与える影響を解明した。この研究を海外の査読付き雑誌に投稿し、レフェリーから有益なコメントをもらうことができた。そのコメントをもとにプレーヤーが均衡から逸脱した戦略を選んだときの仮定に関して検討を行うなど、論文を改善する作業を続けている。 つぎに、上記の論文では、提携の提案者と利益の分配提案者がともにランダムに選ばれる状況を分析したが、提携の提案者と利益分配の提案者が同じであるというように単純化し、提携交渉の前に2人のエージェントが投資を行うモデルを構築した。そして、提携交渉が団体交渉(全体提携)しかできない場合にはフリーライドしてしまう(投資をしない)状況において、逐次的に提携交渉ができる可能性を導入することにより、割引因子が十分大きい場合にはインセンティブが改善することを解明した。この研究は今後、企業間提携の経済分析に応用できる研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一つの論文を査読つき雑誌に投稿できる段階まで完成させたことは計画通りであるが、レフェリーコメントをいただいてさらに改善すべき点が見つかり、その課題に取り組まなければならなくなった。一方で、29年度に取り組む計画であった研究にも着手することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年の7月にパリで開催されるEuropean Meeting on Game Theory (SING13)と8月にリスボンで開催されるEuropean Meeting of Econometric Societyで賃金交渉の研究を報告することが決定している。国際学会で報告することにより論文の質を高めたい。 現在進行中の投資のインセンティブの研究は、企業提携に応用できるようにし、論文の完成を目指す。また国内の研究会においても報告を行えるように努めたい。
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Causes of Carryover |
学会・研究会での報告に至らなかったため研究費を残すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際学会での研究報告のために使用する予定である。計画では今年は1回、国際学会で報告することにしていたが、パリで開催されるEuropean Meeting on Game Theory (SING13)とリスボンで開催されるEuropean Meeting of Economic Societyで研究報告をすることが許可された。これらの旅費と参加費に補填したい。
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