2019 Fiscal Year Annual Research Report
Experimental analysis on social preferences and truth-telling behaviors
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16K03570
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
佐々木 俊一郎 近畿大学, 経済学部, 教授 (50423158)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 実験 / 嘘 / 互酬 / 社会的選好 / 脱税 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに学会等で発表してきた本研究課題に対するフィードバックを参考にして、実験データを再度精査し、論文を改訂した。 嘘をつくことができる状況において、ある経済主体の利己的嘘・向社会的嘘・利他的嘘がその後に続く経済取引においてどのような影響を与えるかについて検証する実験においては、以下のことが明らかになった。第一に、被検者が嘘をつく割合は、利己的嘘・向社会的嘘・利他的嘘で差がないことが確認された。このことは、被験者は必ずしも自分の利益を高めるために嘘をつくわけではないことを示唆している。第二に、利己的嘘はその後に続く経済取引において負の互酬を生むが、向社会的嘘および利他的嘘は正の互酬を生まないことが確認された。この結果は、負の互酬は正の互酬よりも強く機能するという先行研究と整合的である。第三に、利己的嘘だけでなく利他的嘘も、その後に続く経済取引の効率性を損なうことが確認された。このことは、嘘をつくことは、経済主体間の信頼を損なうことを示唆している。これらの結果に関して、本実験をもとにしたワーキングペーパーを改訂するとともに、改訂版の論文を学術雑誌に投稿した。 また、嘘の所得申告によって脱税をすることができる状況において、どのようにして経済主体のタックス・コンプライアンスを向上させるかについて検証した実験では、税金が低所得者に再分配される場合には、被験者は納税順守行動を取る傾向を高めないが、税金が公共財として自分たちに十分還元されることが分かっている場合には、彼らは納税順守行動を取る傾向があることに加え、被検者の危険回避度が高いほど納税順守の行動を取る傾向が高いこと、被検者の危険回避度を考慮すると納税者へのより高い税の還元は、タックス・コンプライアンスをさらに高めること等が明らかになった。これら結果について論文を改訂し、学会で発表した。
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