2016 Fiscal Year Research-status Report
1860年代末のマルクスの信用と恐慌の研究(抜粋ノートの編集とその活用)
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16K03579
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
竹永 進 大東文化大学, 経済学部, 教授 (00119538)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マルクス / 抜粋ノート / 恐慌 / 貨幣と金融 / 資本論 / 信用と投機 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新メガ第Ⅳ部門第19巻のテキストの作成およびこの作業にともなう1860年代末のマルクスによる当時の経済恐慌についての研究を対象とする。昨年度は上記の巻に収録されることになっているマルクスの抜粋ノートB101およびB102の電子テキスト化の仕上げを目標としていたが、28年度中にはB102について作業を要請したドイツ人協力者の都合で仕上げることができず、29年度に持ち越しとなった。そのため初年度の予算を若干今年度に繰り越した。今年度は当初から二年目に予定していたB105とB106の仕上げとともにB102も仕上げられるよう鋭意努力する。 他方、新メガの編集作業にともなう研究の面では、昨年度はマルクスの1868年から1869年にかけてのイギリスを中心とした特異な性格の恐慌についての調査を素材とした英文の研究論文を、ベルリン・ブランデンブルク科学アカデミー(新メガの編集を担っているドイツ政府の設立した研究機関)から出版されている雑誌に掲載することができた。Susumu Takenaga, 'Marx's 'Exzerpthefte' of the later 1860s and the Economic Crisis of 1866, Marx-Engels Jahrbuch, No.16, pp.71-102, DeGruyter Akademie Forschung Germany, Sep. 2016. また、昨年度は1920年代にモスクワでリャザノフとともに第一次(旧)メガの準備作業にあたっていたイサーク・イリイチ・ルービンがこの作業の副産物として生み出した独創的なマルクス貨幣論解釈の書を日本語訳しこれに詳細な分析的序文を付して法政大学出版会から出版した。 他方、上記の編集作業を進めるために東北大学の編集者とも協力体制を作るべく何度か会合をもち今後の打合せを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は当初に計画していた抜粋ノートB101とB102の電子テキスト化を仕上げることを本研究の重点目標としていたが、B102については達成することができなかった。理由の一つは作業を依頼した外国人専門家の個人的な都合により年度内に予定通り進捗しなかったことであり、また、研究代表者自身がこうした作業と並行して進めていた論文の執筆や翻訳の仕事に当初見込んでいた以上の時間とエネルギーを取られたためである。 また、BBAW(ベルリン・ブランデンブルク科学アカデミー)が、現在編集過程にあり今後刊行予定の新メガの第Ⅳ部門の諸巻については紙媒体を廃してデジタル版のみをオンラインで公表することとしたため、これに対応した新たな方針の策定が必要となり、この作業が本年度までずれ込んでいることも、当該部門第19巻の編集作業を先に進めることを躊躇させる要因の一つとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究が中心課題としている新メガ第Ⅳ部門第19巻と内容的に共通する点の多い同部門第14巻(1850年代末のマルクスによる当時の経済恐慌についての新聞・雑誌からの抜粋を収録)が東北大学の守健二教授を中心とするグループによって今年の5月に刊行される運びとなっている。また、BBAWからは新しい編集方針を記したマニュアルが今年の秋には発表される予定である。第19巻の編集作業の継続に不可欠なこれらの資料を徹底的に調べた上で、昨年から持ち越しているノートB102および今年度に作業を予定していたB105とB106のテクストの電子化の仕上げをはかる。 また、上記のテーマに関連して、今年は『資本論』刊行から150年目、また、ロシア革命から100年目にあたり各種の国際コンファレンスが予定されており、これに向けて新メガの編集とも関連する研究報告を行うべくペーパーを準備する。 具体的には、私自身も組織委員会に加わっているリヨンでの9月の国際マルクスコンファレンスのために、1860年代中葉のマルクスによる地代理論の草稿(すでに、新メガ第Ⅱ部門第4.2巻として刊行されている)を、同時期に作成された抜粋ノートとりわけリービヒの農業化学上の主要著作などからの抜粋によりマルクスが得たと考えられるいくつかの重要な理論的示唆を考慮しつつ、彼の地代理論の構造に新たな解明を与えることを目指したペーパーを準備し、コンファレンスで発表し、その後刊行するようにする。 また、後者については11月初旬にモスクワ大学での国際コンファレンスが準備されており、昨年度私が刊行したルービンの編訳書を元に、ルービンによるマルクス解釈の特質と問題点について、彼が1920年代に活動していたモスクワの地でロシア人研究者に私の研究をつたえ彼らからの反応を得てみたいと考える。 今年度も引き続き東北大学やベルリンの関係者との協力関係を継続していく。
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Causes of Carryover |
28年度に予定していた新メガ第Ⅳ部門第19巻に収録予定のマルクスの二つの抜粋ノートの電子テキスト化の仕上げ作業のうちB102に関わる作業が、外国人研究協力者の個人的都合により実施できなかったこと、このための謝礼の支払いならびに関連作業にともなう資料等の購入経費の支出を見送ったことによる。また、新メガの刊行に並行して刊行が続いている雑誌二件(Marx Engels JarhbuchおよびBeitrage zur Marx Forschung)の既刊分の欠号の補充を行ったが、このための経費が見込みより少なくてすみ、このために残金が発生したことも次年度使用額が発生した原因となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は当初予定の抜粋ノートB105とB106に加えて上記のB102についての電子テキストの仕上げを行う予定であり、そのため本来今年度に予定していた金額を上まわる経費支出が見込まれる。 加えて、今年度はマルクス・新メガに関連する国際コンファレンスが9月にリヨンでまた11月にモスクワで開催される予定であり、研究成果を発表するための海外出張をおこなう。また、新メガ第Ⅳ部門第19巻にかかわる今年度・来年度の作業を継続するため、現在中国の大学に在席している日本人研究協力者および東北大学の関係者との打合せ会議も予定しているが、本年度は物品費・図書費はほとんど不要となる見込みであり、昨年からの繰り越し分を合わせれて全体を賄えると考えている。
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Research Products
(9 results)
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[Presentation] Understanding Marx's texts2016
Author(s)
Susumu Takenaga
Organizer
Keio Summer School of Marxian Economics
Place of Presentation
Keio University, Mita, Minatoku Tokyo
Year and Date
2016-08-08
Int'l Joint Research / Invited
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