2017 Fiscal Year Research-status Report
1860年代末のマルクスの信用と恐慌の研究(抜粋ノートの編集とその活用)
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16K03579
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
竹永 進 大東文化大学, 経済学部, 教授 (00119538)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マルクス / 新メガ / 草稿研究 / 抜粋ノート / 過剰生産恐慌 / 貨幣・信用 / 綿花飢饉 / 南北戦争 |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研費プロジェクト実施の第二年目にあたる本年度は、昨年度に引き続き新メガ第Ⅳ部門第19巻に収録される予定のマルクスの抜粋・切り抜きノート全7冊のうち、主として週刊新聞The Money Market Reviewの1866年5月19日から翌1867年12月28日までに刊行された号からの抜粋を含むB102(ないしB108)という番号のノートの内容を、新メガのテキストとして使用しうる形式に仕上げる作業を中心に進め、ほぼこれを完了した。また同時に、このノートに続いてマルクスが作成したと推定される二冊のノートB105(ないしB113)とB106(ないしB114)についても、過去にデジタル化の作業を行なったテキストの内容を精査し第三年度目にB102と同様の作業を実施する準備を行なった。 また今年度はマルクスの『資本論』第一部刊行から150年目にあたり、これを記念すべく国内外で各種のセミナー・シンポジウムが開催されたので、これらに積極的にかかわり組織・研究発表を行なった。具体的には、日本国内の経済理論学会・経済学史学会・社会思想史学会等の7つの学会の共催によるシンポジウムの組織委員を務め、9月に武蔵大学で開催されたイベントにおいて各学会から派遣された報告者の話に対する総括討論・質問を行なった。また同月末にフランスのリヨンで開催された国際コンファレンスでは新メガの成果を生かしたマルクスの地代理論についての研究発表を行なった。そして11月初旬にロシア革命100年を記念してモスクワで開催された国際コンファレンスでは2011年にモスクワで初めて公表されたI.I.ルービンの「マルクス貨幣論概説」を取り上げ、これについての批判的分析を含む研究発表を現地で実施した。 今年3月にはやはり『資本論』150年、マルクス生誕200年に関連して、パリ第一大学(ソルボンヌ)の大学院に客員教授として招聘された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は『資本論』第一部・マルクス生誕・ロシア革命といったマルクスに関連するいくつかの節目の年にあたり、国内外で複数のイベントが企画され、これまで新メガに関連して研究発表や研究論文の公表を行なってきた者としてこれらに関与せざるをえず、そのため研究課題遂行のための本来の作業がやや手薄になったことは否定できない。ただし、これらのイベントの組織やそのための出張そこでの発表・討論はいずれも本研究と密接に関連しまたその成果を学会関係者に伝達するものであり、やや進捗が遅れたとはいえ無駄に時間を浪費したためではないと考える。 新メガ第Ⅳ部門第19巻に収録が予定されているのはマルクスが1868年9月から1869年9月までの約1年のあいだに作成したと推定される七冊の抜粋・切り抜きノートであるが、これらのうち二冊(B102,B101)はすでにテキスト化がなされている。本年度にテキスト化を予定していた他の二冊(B105とB106)はテキスト化が未完であるとはいえ、すでに過去に行なった作業はかなりの完成度に達しており、今後に必要とされる作業量はそれほど大きくはないと見込まれる。 しかし残りの三冊(P001,P002,P003)は、その全体がThe Daily Newsという日刊紙からの膨大な分量にのぼる切り抜きである。 本課題の遂行の進捗がやや遅れているのは、上記のような今年度の特殊な事情によるとともに、研究代表者が単独で実施するには処理に必要な分量が全体としてやや過大であったことにもよるかもしれない。しかし残りの三冊は判読に困難をともなうマルクス特有の書体からなるのではなく、印刷紙面の切り抜きの集合であり、これのテキスト化はその前の四冊のノートにくらべれば、その分量のわりにはスムーズに進むことが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題の最終第三年度には、新メガ第Ⅳ部門第19巻に収録予定のマルクスのノート全七冊のテキスト化を終えることを目指す。このためにはすでにかなりの程度まで実質的にテキスト化がなされているB105とB106の二冊に加えて、新聞記事からの切り抜きを内容とする残りの三冊のテキスト化に力を入れることが必要である。最終年度に割り当てられる予算の範囲内で専門能力のある外部の人材からの助力も求めてこれらを遂行していく予定である。 と同時に2018年度も前年度同様にマルクス関連のイベント、特に、日本国内の関係七学会共催による国際シンポジウムが12月の下旬に法政大学市ヶ谷校舎で開催される予定になっている。これに対しても組織担当者の一人として相応の注力が求められるとともに、現時点でのこのようなイベントには欠かすことのできないメガ関連の研究発表のために、メガ編集の国際的な拠点となっているベルリンのブランデンブルク科学アカデミーの当該部門の担当者を本科研費予算の一部を充当して招聘することにしている。また同時に、招聘者の日本滞在中には本科研費による課題遂行をはじめ日本国内で進められているメガ編集作業の関係者たちとの打ち合わせの会合も予定している。 以上のように第三(最終)年度もマルクスやメガに関連して前年度同様の制約が加わることが予想されるが、上記の予定の遂行に極力努力して行きたいと考える。
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Causes of Carryover |
第二年度に購入を予定していた書籍が取次ぎ店から年度末までに納入されなかったために若干の次年度繰越使用額が発生した。
上記書籍は第3年度中には納入される見込みであり特に計画を立てるまでもなく支出されるはずである。
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