2023 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical and historical studies on money and the state
Project/Area Number |
16K03583
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
大友 敏明 立教大学, 経済学部, 特定課題研究員 (90194224)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中央銀行の独立性 / 中央銀行 / 地金論争 / 計算貨幣 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、J.ステュア-トの計算貨幣論と福田徳三の流通の理論に関する研究を行った。ステュア-トによれば、計算貨幣という概念は、フィ-トなどの長さの単位と同じように、貨幣単位にも実体がある。実体の上に貨幣呼称を付けるのが計算貨幣である。しかし、鋳貨の場合には、金属の一定分量に名称を付けるので、計算単位を商品に永続的に固定することはできない。なぜなら、金銀比価や摩損などの理由から商品の価値を測る尺度としては鋳貨は不適格だからである。これは「貨幣と鋳貨」の矛盾である。この矛盾を解決するために、貨幣単位から金属という商品性(実体)を切り離し、実体をもたない紙幣や銀行貨幣を計算貨幣にする。こうして、ステュア-トの計算貨幣論は信用論や銀行貨幣論へと展開していくのである。 福田徳三の流通の理論は、(1)交換と分配の理論、(2)貨幣の理論、(3)余剰の概念からなる。本年度は特に余剰の概念に焦点を当てた。福田はマルクスの剰余価値論を批判し、余剰に関してはマ-シャルの消費者余剰の理論の一部を批判しながらも継承した。そのうえで福田はJ.ホブソンの単線的生産構造と貯蓄と消費の理論を自身の理論の中心に置いた。これを基礎にして、福田は社会的に必要な貯蓄と社会的に必要な消費との間における均衡と不均衡という概念を導入し、資本主義社会の動態論を展開した。 本年度は研究の最終年度である。補助事業期間全体を通じての研究成果としては、次のものがある。(1)雑誌論文:大友敏明「ヘンリ-・ソ-ントンとイングランド銀行の独立性」『経済志林』(法政大学)第89巻第3号、2022年3月、77-122。(2)学会発表:大友敏明「ヘンリ-・ソ-ントンとイングランド銀行の独立性」ケインズ学会、2017年。当初の計画では、『貨幣と国家』という著作を英文で刊行する予定であったが、その目的は達成することはできなかった。
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Remarks |
1.書評:SGCIME(マルクス経済学の現代的課題研究会)編『マルクス経済学 市場理論の構造と転回』桜井書店、2021年。『経済学史研究』第65巻第1号、2023年7月 2.書評:楊枝嗣朗著『貨幣と国家―資本主義的信用貨幣制度の生成と展開』文眞堂、2022年。『季刊経済理論』第60巻第3号、2023年10月
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