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2017 Fiscal Year Research-status Report

『国富論』における政府の役割と『道徳感情論』の正義論との関連性に関する研究

Research Project

Project/Area Number 16K03587
Research InstitutionKyushu Sangyo University

Principal Investigator

高 哲男  九州産業大学, 経済・ビジネス研究科, 教授 (90106790)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2019-03-31
Keywords正義 / 効用 / アダム・スミス / 道徳 / 公共心 / 競争 / 思いやり / 利己心
Outline of Annual Research Achievements

正義と効用との関係を、『道徳感情論』に即して確定するために、原典に即して検討を進めているが、論文執筆を進めていく過程で、スミスの「方法論」を改めて確認する必要があること、特に、スミスを「理神論的思考」の持ち主として位置付けてきた従来の研究では、道徳や一般的行動規則自身が歴史的に変化していくというとらえ方が、何処から出てくるか、進歩史観に立つ説明しかできないという限界が、より明確になってきた。そこで、まずスミスがどのように効用をとらえていたか、つまりいわゆる功利主義的社会改革思想とどの点が異なるか、これを突き詰めて考え、理想的社会像などスミスは持っていなかったこと、むしろ、実際の問題に対して、徹底した改良主義的対処を続けることの重要さを力説し続けた、という点を解明した。
ただし、そこからまた、「スミスの体系」はどのようなものであるか、という別の問題が発生してきている。つまり、ハチソン流の「道徳哲学」体系は、どのような意味でスミスに受け継がれ、どのようにその内容が組み換えられ、新しい経済学が展開されていったか、という問題であり、現在、これを『国富論』に即して検討中である。たぶん、スミスの最終目的は、「道徳哲学」の再構築であったと思われる。
また、正義と政府の役割との関係を解明するには、「正義」の歴史的変化をスミスがどのようにとらえていたを、再構成する必要があり、学会報告でとりあえず問題提起したところである。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

『道徳感情論』も『国富論』も、読めば読むほど、理解が進めば進むほど、さらに大きな問題が浮き上がってくる、という特徴がある。要するに古典とはそんなものなのだが、スミスの場合は、とりわけこれが著しい。したがって、改めて『国富論』を精読している段階であり、これには予想以上に時間を取られている。
ただし、より直接的な遅れの原因は、秋にエジンバラに行き、ニコラス・フィリプソンと一緒にスミスの「外部感覚論」と「模倣芸術論」について共同研究をする予定だったが、急逝してしまい、未開拓の分野であるスミスの人間本性論についての研究を予定通り進められなくなったこと、さらに、3月末で定年退職し、研究機関を変更したため、研究室の片づけ、蔵書の処分など、ずいぶん時間を取られてしまったことにある。

Strategy for Future Research Activity

『道徳感情論』の解釈にしても、『国富論』の解釈にしても、従来の研究とはかなり異なったものになりつつあり、とりあえず、出来るだけ多くの研究者と議論するために、学会報告を続けている。外国の学会報告に先立ち、もう少し明確なスミス解釈を提起するため、さしあたり日本の学会が対象であるが。
エジンバラで、フィリプソンと共同研究する予定であった作業を、なんとしても今年は実現したい。さらに、ハチソンとヒュームの「道徳哲学」の内容を明確にしたうえで、スミス自身がどのように、二人を超えようとしたか、これを現地調査に基づいて、資料的に確定したい。

Causes of Carryover

秋にエジンバラ大学とスコットランド国立図書館でスミスの模倣芸術論を中心に展開された「感情の生成」についての議論を、ニコラス・フィリプソンと一緒に研究する予定であったが、彼が急逝したため、この作業を一年先に繰り延べざるを得なくなったため。彼の協力なしにこの作業を遂行するには、かなりの準備が必要である。
来年度、実施する。

  • Research Products

    (3 results)

All 2018 2017

All Journal Article (1 results) Presentation (2 results)

  • [Journal Article] On the Meaning of the Layered and Evolutionary Structure of“Utility” in Adam Smith’s The Theory of Moral Sentiments.2018

    • Author(s)
      Tetsuo Taka
    • Journal Title

      九州産業大学『エコノミクス』

      Volume: 22 Pages: 25-43

  • [Presentation] 29アダム・スミスが進化論的経済学者であった理由について2018

    • Author(s)
      高 哲男
    • Organizer
      進化経済学会
  • [Presentation] 29アダム・スミスの思想体系と方法――『アダム・スミス――競争と共感、そして自由な社会へ』をまとめながら気づいたことを中心に――2017

    • Author(s)
      高 哲男
    • Organizer
      経済学史学会西南部会

URL: 

Published: 2018-12-17  

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