2017 Fiscal Year Research-status Report
初期近代イングランドの経済の制度化をめぐる論争とオランダ・モデル
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16K03588
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Research Institution | Ohtsuki City College |
Principal Investigator |
伊藤 誠一郎 大月短期大学, 経済科, 教授(移行) (20255582)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 17世紀 / イングランド / 漁業 / 銀行 / 経済思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
英文著作(仮題:The making of the English economic discourse-four seventeenth-century controversies over the Dutch model-)のchapter, 1 Herring fishing and the Dutch modelの一部となる、16世紀後半のイングランドにおける漁業に関する議論をまとめた論考‘Navy or fishery - the beginning of the early modern English economic controversy -’を平成28年度に用意していたが、それをさらに拡充し、ヨーロッパ経済思想史学会(5月、アントワープ)で報告した。そして、それを含め、英文著作のchapter 1、2、3、4の推敲を順次すすめ、12月末頃までに終えた。また、その間、9月には必要な資料を収集しに大英図書館、ロンドン大学図書館などを訪問した。年末から改めて、book proposalを改訂した。そして1月中にまず、book proposalの英語校閲を専門業者に依頼し、その校閲稿を改めてチェックした後、国内外の研究者に個別に送って、コメントも何人からか得た。校閲料の科研費からの支払いについては、申請中の経済学史学会英文論集委員会からの補助が得られるかどうかがわかる新年度まで待つこととした。他方、この著作の続きとなる研究の一部である、1690年代中ごろの土地銀行論争についての原稿作成のために必要な資料調査を2月末から3月初旬にかけてロンドンで行い、平成30年6月にマドリッドで開催されるヨーロッパ経済思想史学会での報告のための原稿の準備に取り掛かり、'The land bank united, a failed project'としてまとめていった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
英文著作をまとめていく作業は、おおむね予定通り進んでいる。とくに平成29年度に関しては研究実施計画に書いたとおり、原稿全体をまとめることができた。経済学史学会からの補助申請の結果が平成30年度に入ってからわかるということもあり、原稿本体の英文校閲は平成30年度に入ってからおこなうこととしたり、book proposalについても、近隣分野の著名な研究者からのコメントを平成30年度の6月初旬のヨーロッパ経済思想史学会であったときに直接いただけることになっているため、book proposalの最終版の完成はそのあとになり、出版社との交渉は平成30年度の夏になってからになりそうであるが、これも、おおむね予定通りである。また、当初予定していたブラジルのCuhna氏との共同編著の計画は、氏の予定がうまくつかずに、特に進んではいない。その代わり、そもそも本研究内で予定していた、1690年代の土地銀行論争の研究を進めることとし、平成30年6月のヨーロッパ経済思想史学会での報告のための原稿作成をおこなった。米国ハーバード大学にある資料調査はできなかったが、それ以前に収集すべき一次資料がロンドンの大英図書館やロンドン大学図書館にあるため、こちらでの調査を優先した。
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Strategy for Future Research Activity |
英文著作の出版に向けての作業を引き続き行う。現在までの進捗状況の欄でも書いたように、最終的なbook proposalの改訂作業を平成30年夏には終え、また原稿本体の英文校閲もその頃までには完成させ、夏のうちに出版社への応募をする予定である。この後は、その結果がどうなるかによって異なるが、採用、不採用いずれにせよ、原稿の改訂を続けておこなっていくことになる。Cuhna氏との共同作業を本研究の期間内に大幅にすすめることは困難であるかもしれないので、やはり本研究の一部としていて予定していた、現在準備中の英文著作の続編の内容の一部となる、17世紀末イングランドの土地銀行論争およびその後の金融論争についての研究を進めていく。まず、平成30年6月にはヨーロッパ経済思想史学会で1696年の土地銀行をめぐる議論を分析した'The land bank united, a failed project'を報告し、その後これまでにおこなって来た私自身の土地銀行論争研究を踏まえて、チャールズ・ダヴナントの信用論について、そしてできれば、その後ジョン・ローおよびその周辺の金融をめぐる議論の分析まですすめていきたい。いずれも、その中間報告として、ヨーロッパ経済思想史学会かオーストラリア経済思想史学会での発表を予定している。当然ながら、これらの研究は、これまで私がおこなって来た17世紀の長い経済・金融の論争の研究を前提としており、その点で、これまでおこなわれてきた他の同テーマの研究との違いが出てくると予想される。
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Causes of Carryover |
当初英文校閲を年度内におこない、その支払もおこなって行く予定であったが、一部を経済学史学会英文論集委員会からの補助から支出してもらうように申請しており、その結果が平成30年度になってからでないとわからないので、科研費からの支出もどれだけになるかがわからなかったため、一部の経費の執行を平成30年度に持ち越したた。平成30年5月末の時点で、経済学史学会からの英文校閲のために25万円の補助が出るという内定通知を得ており、6月1日の幹事会での正式決定を待っている状況である。そのため、不足する英文校閲費はすでに本科学研究費からの支払いをすでに勤務校に申請している。
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