2018 Fiscal Year Research-status Report
高頻度注文板データを用いた高速での株価形成に関する統計解析
Project/Area Number |
16K03601
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
林 高樹 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 教授 (80420826)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 高頻度データ / マーケット・マイクロストラクチャ / 統計解析 / 先行遅行分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は当初計画では最終年度であったが, 1年期間延長することにした. 当分野の学術研究が進展し, また, 証券市場の環境も変化する一方で, 本プロジェクトの研究環境整備が想定していた通りには進まない中, 当初計画の見直しを行った. 特に, 今後は,「国内3市場の注文板データ」ではなく, 「東証の注文板データ」にフォーカスした研究を進めることとした. 初年度, 研究計画調書(プロポーザル)内の当初研究課題(1) (注文板データを用いた探索的分析)の一つとして新規に着手した「ウェーブレット法」を用いた先行遅行関係分析に関しては, 1本目が国際誌に掲載された. 他のワーキングペーパーについては, 引き続き論文投稿中である. 昨年度に取り組みを開始した同(1)(2) (市場参加の取引行動分析)にまたがる分析である, 日銀による ETF買入の株式市場への影響度に関する実証分析については, 作業進行中のまま年度末を迎えた. また, (1)(2)の活動の一環として, 引き続き, データサイエンス/機械学習による新たな切り口でのデータ分析の可能性をサーチし, 文献をサーチすると共にテスト用データを使って予備的分析を行なった. 前年度までの研究遂行上の課題を踏まえ, 今年度は, 他の研究者との情報交換の機会を増やすことを心がけ, 研究課題推進の可能性を探った. 具体的には, 同 (1-a) (市場クオリティの分析) について, 東証データにフォーカスしながら, 市場クオリティの測定に関する方法論の確立と実証分析に向けて, 学外の研究者との協働での調査を開始した. 合わせて, 過去年度手付かずであった同(2)について, 学外の研究者との協働での調査を開始した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は当初計画では最終年度であったが, 1年期間延長することにした. 過去年度の研究遂行上の課題, 特に研究環境整備が進まない状況が続いた. 今年度はITスキルを有するアルバイト学生を雇用しデータ整理やシステム環境整備の補助業務を行なって貰ったが, 本人の学業優先の中, 研究の進展には不十分な時間量にとどまった. 当分野における学術研究が進展し, 証券市場の環境も変化する中, 当初計画の一部見直しを迫られた.
研究進展の遅れの要因として, 分析作業におけるマンパワー不足と, 分析の前段階におけるデータベースの構築・管理作業に, 多くの時間が取られたこと, 研究者との意見交換の機会が限られたこと等が挙げられる.
|
Strategy for Future Research Activity |
当初研究計画からの変更点としては、以下の通りである。 プロポーザル内研究課題(1)の国内3市場の注文板データを用いた実証分析は, PTS2市場データの入手以前に, データ処理の工数に対するマンパワー不足の問題が解消されない状態が続くことから, 「国内3市場」ではなく, 「東証の注文板データ」にフォーカスすることにした. よって, 「3市場間の相違」の視点(同(イ))での比較分析は行わないこととした. 3市場の統合データによる分析は, HFTの市場間行動を見る上で興味深い視点ではあり続けるものの, 市場横断での共通の注文者を特定できないというデータ仕様上の制約の他, 東証の取引シェアが3市場合計の9割を超えるとされる中, 実務的意義の点でもさほど大きくはないと判断した. それに伴い, 同(1-a)については, 3市場ではなく, 東証に限定した市場クオリティの分析を行うこととし, 同(1-c)「3市場間の連動性の分析」は取りやめることとした. 同(1-b)「オーダーフロー分析」については, 2018年に入り, 東証の注文ID付きのオーダーフローのデータを分析した実証研究が国内の複数の研究グループによって学会発表や学術誌において相次いで公表された. そのため, 本課題を遂行する意義は薄くなったと判断し, 取りやめることとした. また, 分析期間の観点から, 東証ティックサイズの変更前後の分析(同(ロ))ではなく, 鮮度の観点からより新しいデータ期間の使用を検討することとした. 研究遂行上の課題への対応策は , 昨年度と同様である. 引き続き, データの加工・分析サポートのためのアルバイトの確保に努めたい. 研究アイデアの醸成や研究内容や質の向上のため他機関の研究者との協働作業を模索し研究活動を推進したい. 実証分析では, データサイエンス・AI技術を積極的に取り入れる試みも行いたい.
|
Causes of Carryover |
当分野の学術研究が進展し, 証券市場の環境も変化する中, 研究代表者(PI)の研究環境整備が想定通り進まない状況において, 当初計画からの変更が迫られ, 研究期間を1年期間延長することにしたため.
残額は, 分析作業を効率的に行うためのアルバイト代, 関連分野の最新理論や方法論について学ぶための謝金ならびに資料購入費, 大規模データを蓄積し分析するためのシステム環境整備費のほか, 最終年度でもあり成果発表のための旅費や出版費に充当する予定である.
|