2018 Fiscal Year Annual Research Report
Poverty reduction and social inclusion by social business
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16K03608
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池本 幸生 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (20222911)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 範惇 帝京大学, 経済学部, 教授 (50278438)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ソーシャル・ビジネス / 社会的包摂 / マイクロクレジット / スペイン |
Outline of Annual Research Achievements |
貧困は常に社会的排除を伴い、したがって貧困対策は単に貧困世帯の所得を増やす手段を講じるだけでは不十分であり、社会的包摂を組み込んだものでなければならない。返済率の高さに目を奪われがちなバングラデシュのグラミン銀行のマイクロクレジットも、その実態は社会から排除された人々(特に女性)を社会に包摂する仕組みを組み込んでおり、それによって人々をエンパワーし、その結果として所得が増える。返済率の高さはその結果にすぎない。本研究では、この理解に基づき、貧困問題に限らず、様々な分野における社会的課題を解決しようとするソーシャル・ビジネスには社会的包摂の側面を持っていることを明らかすることであった。 本研究では、理論的研究としてアマルティア・センの『正義のアイデア』に示されたアプローチにを分析し、センが民主主義の重要性として強調するものには人々を結び付け、他者の理解につなげるという要素が重要であることを明らかにした。 現地調査による成果として、スペインで実施されているグラミン銀行のマイクロクレジット型プロジェクトが、移民や犯罪者などの社会から排除された人々に対して少額融資を行なう条件として、ミーティング、職業訓練、社会教育等の事業を実施し、それに積極的に参加率することによって、他のメンバーからの信頼を集め、融資につないでいる様子を明らかにした。 この調査の一環として、スペインからこのプロジェクトのマネジャーを日本に招聘し、秋田市で貧困家庭の子供たちに対する支援について一緒に調査を行なった。その結果、食料の支援や教育の機会の提供は直接のきっかけであり、それらの活動を通して個々の子供に対する密接なケアを行ない、社会への包摂を促すという点が明らかにされ、それはスペインのプロジェクトとも共通する要素であることが明らかとなった。
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