2017 Fiscal Year Research-status Report
経済統合と海外直接投資に関する応用一般均衡モデル分析
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16K03613
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
細江 宣裕 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (60313483)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 応用一般均衡モデル / 震災復興 / Brexit / FDI |
Outline of Annual Research Achievements |
企業の多様性を考慮した多国間の応用一般均衡モデルを用いて、英国の欧州連合離脱の影響を分析した。そこでは、英国、欧州連合27カ国、日本、米国、その他の地域の5地域モデルを構築し、英欧間の関税・非関税障壁の上昇、英欧間の移民労働者の帰還、欧州連合への財政負担の消滅といった直接的・短期的な影響に加えて、米欧・日欧間の自由貿易協定の締結、欧州27カ国相互の非関税障壁の削減といった、間接的・長期的な影響についても検討した。完成した論文をEconomic Modelling誌に投稿し、その後、査読者から修正意見を受けて改稿し、掲載が決定された。また、同論文は、国際学会で口頭報告された。 これ以外に、途上国で広く採用されている燃料への補助金削減政策について、ナイジェリアを対象に応用一般均衡モデル分析を行った。そこでは、所得階層で区分された複数の家計をモデル内に取り込み、また、課税時に租税回避・脱税行動が発生することや、輸出入において密輸が発生することといった、途上国において特徴的な構造を描写した。これらによって、ファーストベストな課税は実現できないものの、セカンドベストな課税がどのようなものになるかを示し、その影響が、所得分配に対してどのような影響を与えるのかを計量的に示した。この研究成果は、GRIPS Discussion Paperとした上で、査読誌に投稿した(査読中)。 海外直接投資に関する分析としては、バングラデシュを対象にした静学モデルを構築し、FDIストックが近隣のアジア中進国並に増加(25%)した場合や人的資源を質的に向上させた場合の効果を、家計を細分化して明らかにした。これについても、GRIPS Discussion Paperとした上で、査読誌に投稿した(査読中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初から計画していた、企業の多様性を考慮した応用一般均衡モデルを構築し、それを用いた地域経済統合(Brexit)の影響分析を行った。この研究結果について、査読誌に掲載公刊することができた。また、かねてから進めていた、動学モデルによる震災からの復興分析についても査読誌に掲載した。他2本の論文についても、査読誌に投稿するまでに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに構築した応用一般均衡モデルを適用して、総合的な最適課税の問題を分析する。とくに途上国に焦点を当てて、最適課税・関税のあり方を、これまでに構築されてきた理論モデルと整合性をとりながら、数値計算によって明らかにする。合わせて、海外直接投資(FDI)を考慮した応用一般均衡モデルを構築して、これまでの静学分析を拡張し、動学分析を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
生産性と海外直接投資のデータ整備に時間がかかり、当該年度にはその分の経費執行が予想より進まなかった。一方で、残ったデータ整備を翌年度以降も継続して行うこととし、その分の経費を翌年に繰り越す。
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Research Products
(9 results)