2017 Fiscal Year Research-status Report
メッシュデータを活用したコンパクトシティの効果と政策手法の分析
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16K03614
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
沓澤 隆司 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (90418773)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 博雅 専修大学, 経営学部, 講師 (00738958)
森岡 拓郎 政策研究大学院大学, 政策研究科, 講師 (80725507)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 立地適正化計画 / 公共施設管理計画 / 基準化された標準距離 / 人口メッシュ / GIS / 市街化区域 / 固定効果分析 / 公共交通 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の本研究においては、コンパクトシティを形成するために必要な施策やその効果の分析を行った。その手法は第1には、コンパクトシティの形成に有意義と考えられる現状の施策とその課題に関して、国土交通省などの関係省庁、URなどの関係機関、地方公共団体からヒアリングを行った。その中で、実際に講じられている取組みの中でどのようなものがコンパクトシティの形成に効果的であると考えられるかについての仮説の設定を行った。この結果、地方公共団体による立地適正化計画の推進や公共施設等の再配置に向けた取組のほか、市街化区域などの政策区域の設定や公共交通の整備の状況が都市のコンパクト化に影響を及ぼし得るとの知見を得た。 第2に、都市のコンパクト化を示す指標として昨年度開発を行った「標準距離」について見直しを行った。すなわち、都市の人口増加に伴って、住民が居住する領域が広がる部分を補正するために、都市の重心から各人口メッシュまでの距離を人口の平方根で割る修正を加えて「基準化された標準距離」という指標を開発した。これによって、人口が大きな大都市において居住人口の大きさによって都市のコンパクト化が過小に評価されることが回避されることになった。 第3に、都市のコンパクト化に向けた施策の効果を検証するために、パネルデータによる固定効果分析を行った。ここでは、第2の研究内容で説明した「基準化された標準距離」を説明変数とし、都市計画法等の土地利用規制からそれぞれの都市において市街化が可能な面積である「市街化可能面積」、公共交通を利用する居住者の割合を説明変数として、都市のコンパクト化を推進するためにそれぞれに自治体で進めてきた土地利用規制や公共交通の充実策がどの程度コンパクトシティ形成に貢献しうるかを算出した。この結果、これらの施策がコンパクトシティ形成に一定の成果を挙げていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
28年度の研究内容が当初の予測以上に進捗したことを踏まえ、29年度においては、前倒しで、国、地方自治体等へのヒアリングを実施し、都市のコンパクト化に関して効果的と考えられる施策の効果と課題に関して情報の収集と分析・整理を行うことができた。この過程で、29年度に主として取り組む分析である都市のコンパクト化に資すると考えられる要因について仮説を定立することが円滑に行えることが可能となった。 これと併せて、都市のコンパクト化を示す指標である「標準距離」に関して、大都市の人口集積に起因するバイアスを補正する「基準化された標準距離」という指標を開発した上で都市のコンパクト化に貢献する「市街化可能面積」と「公共交通利用率」と説明変数とする固定効果分析を行うことができた。 以上の分析を行うことにより、最終年度においては、都市のコンパクト化を実現させるための施策の取りまとめに十分な時間的余裕を持って専念できる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においては以下の方針で実施していくことといたしたい。第1に、昨年度主に国、地方公共団体等を対象に実施したヒアリングに続いて、これまで行っていなかった有識者や都市のコンパクト化に資する都市再生の取組を行っている民間企業・NPOなどを対象にヒアリングを実施し、官民連携による都市再生など、コンパクトシティの形成に必要な施策のあり方について分析を行う。 第2に、昨年度行ったパネルデータを踏まえた固定効果分析の分析の成果を踏まえ、都市のコンパクト化に向けた政策手法別の費用と便益分析を行い、限られた予算の中でより効果的な施策の在り方を明らかにする。 第3に、上記のヒアリングを踏まえた分析と費用便益分析を踏まえ、今後のコンパクトシティ形成に向けた効率的効果的な政策推進に向けた課題の整理と政策提言を行うものとする。
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Causes of Carryover |
平成29年度においても行政担当者等を対象にヒアリングを実施したが、謝金を辞退された方も生じた上に、平成30年度にも都市再生の取り組みを行う関係者、有識者等からさらなるヒアリングや助言を受けることを予定しており、繰り越した金額に関しては、さらなるヒアリング、助言を受けた際の謝金の支出を想定している。 また、平成30年度においては、コンパクトシティに関する施策の費用便益分析を行い、それを踏まえた効率的効果的な施策を提案することを想定しており、そのための実証分析を行うために必要なデータベース、ソフト等の購入に必要な支出に使用額を充てることを想定している。
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