2019 Fiscal Year Research-status Report
二国間航空自由化政策の限界と多国間航空自由化協定の効率性、実現可能性と安定性
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16K03628
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉田 雄一朗 広島大学, 国際協力研究科, 教授 (70339919)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 航空 / 機関選択 / 自由化政策 / 競争 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は高速鉄道開発が航空産業に与えた影響を調査するために、航空と高速鉄道との間のモーダルチョイスの利用可能性だけでなく、発地および着地の都市の地理的特性も考慮した実証分析を行った。まず、航空と高速鉄道との間の交通機関接続性を数値化するために次数中心性と調和中心性の両方を測定したのち、中国の46の空港と日本の16の空港について2007~2015年の観察期間からなるデータセットを構築して、これら2カ国の主要空港の利用率に対する高速鉄道ネットワーク開発の影響を比較した。高速鉄道の接続性が増加すると、中国の空港の国内および総交通量は平均して減少することが示された。一方で、日本ではほとんど変化がないことがわかった。分析の結果から、航空と高速鉄道の間には強い補完効果が観察された。この背後には、国際航空旅客を主要空港へと運ぶ高速鉄道のインターモーダルリンケージとしての機能があると考えられ、これが、一部の空港において航空旅客の増加につながっている可能性が考えられる。分析を通じて、中国と日本の空港に対して高速鉄道の接続性がもついくつかの差別化された影響も明らかになった。中国では主要空港については航空と高速鉄道との接続の有無に関係なく大きな旅客数を擁する傾向があるが、主要空港以外についてはその限りではないことが明らかになった。以上の結果を、 “Impact of High-Speed Rail Network Development on Airport Traffic and Traffic Distribution: Evidence from China and Japan”として、Transportation Research Part A: Policy and Practice(Volume 127, September 2019, Pages 115-135.)に公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題ではこれまで上記の論文の他に、Bilotkach, et al., (International Journal of Industrial Organization, 2019), Wandani, et al.(International Association of Traffic and Safety Sciences (IATSS) Research, 2018), Manoratna, , et al., (Transportation Research Part D: Transport and Environment, 2017)、Ha, et al. (Journal of Air Transport Management, 2017), Wan, et al. (Transportation Research Part A: Policy and Practice, 2016)など、航空およびその他の交通に関する一連の論文を国際的に評価の高い学術誌に公刊してきた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は東南アジア諸国連合(ASEAN)における多国間航空自由化が域内国際航空旅客流動に与えた効果についての実証的研究を継続していく。近年、ASEAN諸国は、1995年以来議論され計画されてきたASEAN単一航空市場としても知られるASEANオープンスカイ協定(OSA)による航空輸送の自由化に同意した。 このASEAN-OSAは、加盟国間の第3、第4、および第5の航空自由権に対する制限を取り除くことにより批准国の航空会社への域内航空市場へのアクセスを開放することを目的としたものである。この自由化により生じた域内外の航空会社間での競争が、航空券の価格の下落を引き起こすとともに乗客数の増加をもたらしたと考えられる。本研究を通じて、ASEAN-OSAが国際航空旅客数全体だけでなく、低コスト航空会社(LCC)およびフルサービス航空会社(FSC)それぞれの旅客数に与えた影響を明らかにすることを目的としている。また、この研究では、ASEAN域内で運行する航空会社の数や、LCCの数、FSCの数に対するASEAN-OSAによる自由化の影響も推定する。北東アジアおよび東南アジアの30の主要空港を発地または着地とする航空旅行予約記録データに対し、差の差の分析(DID)と傾向スコアマッチング(PSM)を使用した推定を行う。この研究を通じ、航空自由化政策がASEAN域内の航空市場にどのような影響を与えたのかを実証的に明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
国際航空政策について理論と実証の両面から分析を行うにあたって、規範的な分析だけでなく、実際の国際航空旅客流動の特質を分析する必要がある。今年度は本研究の持つこの実証的側面に関して、東南アジア諸国連合が近年行ったASEANオープンスカイ協定の国際航空旅客流動に与えた効果の分析ならびに、国際航空サービスのさまざまな属性に応じた本邦における旅客需要の特性についての分析を行い、追加論文にまとめる必要が生じた。これらの研究プロジェクトは国際学会での発表を経たのち論文投稿を予定している。
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Research Products
(8 results)