2016 Fiscal Year Research-status Report
空間経済システムにおける可動資本の役割:地域間格差と貿易政策の分析を中心に
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16K03629
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
高塚 創 香川大学, 地域マネジメント研究科, 教授 (50304572)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 最適関税 / 関税競争 / 可動資本 / 賃金格差 / 所得格差 / 弾力的労働供給 / 自国市場効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はまず,CES型効用関数と固定的労働供給を仮定する基本モデルを用いて関税政策の分析を行った.具体的には,二国・一部門・二要素のモデルを用いて,国際間を移動可能な資本がある場合に,最適関税率の特性を調べ,関税競争がどのような帰結をもたらすのかを分析した.その結果,資本集約度が高い場合には,最適関税率は国の規模の減少関数となり,戦略的補完性を持つこと,また関税競争では小国が資本を獲得し,厚生を上昇させる可能性があることが分かった.このような結果が得られるのは,大国ほど関税政策によって資本レントを上昇させ,それによって外国需要を縮小させるため,課税のインセンティブが弱くなるためである.以上の結果は,可動資本を考慮しない既存研究とは対照的な結果であり,最適関税の研究分野における新しい結果であると考えられる.次に,Ago et al. (2014) に倣い,労働供給に対して準線形の効用関数を用いて,弾力的労働供給を考慮した国際格差の分析を行った.具体的には,二国・一部門・二要素のモデルを用いて,国の人口規模が賃金率,所得,企業シェアの国際格差にどのような影響を与えるかについて分析を行った.その結果,消費者の多様性嗜好が強く,輸送費が高い場合には,大国において賃金率が低くなる可能性があること,逆に消費者の多様性嗜好が弱く,輸送費が低い場合には,大国において所得や企業シェアが低くなる可能性があることが分かった.これは先行研究では得られていない新しい結果である.これらの結果については,3つの国際会議と2つの国内学会(内1つは招待講演),2つの国内セミナーにおいて発表し,1つは現在専門誌へ投稿中であり,もう1つは投稿にむけて準備中の段階である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」についても記したように,本研究課題の計画に従って,最適関税・関税競争,賃金や所得等の国際格差の理論分析を,空間経済モデルを応用して行い,そのうち一つをワーキングペーパーとして発表することができた.また,これまでに発表してきた研究や当該分野の主要研究を整理して書籍を出版することができた.したがって,おおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も本研究課題の計画に従って,貿易政策や国際格差の分析を中心に研究を実施する.次年度は,各国が(輸入)関税以外の政策オプションを持つ場合に,1)最適政策やナッシュ均衡がどのような特徴をもつか,2)ナッシュ均衡が効率的でない場合,非効率性の源泉は何か,3)非効率性を脱するためにどのような国際協調が求められるか,について分析を行っていく.そしてその研究成果を国内外の学会・研究会で発表し,学術専門誌への投稿を順次進めていく.
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Causes of Carryover |
2016年度は参加予定の国際会議が日本で開催されたため,海外出張に支出予定していた助成金が余剰分として生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度は海外で開催される国際会議への出席に加え,他機関に滞在しての共同研究も予定している.2016年度に発生した次年度使用額については,これらに使用する計画である.
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Research Products
(9 results)