2016 Fiscal Year Research-status Report
都市雇用圏と非都市雇用圏との関係に着目した社会資本整備のストック効果に関する研究
Project/Area Number |
16K03634
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
朝日 ちさと 首都大学東京, 社会科学研究科, 准教授 (90457812)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 社会資本 / ストック効果 / 都市雇用圏 / 公共施設 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,地域の持続可能性に資する社会資本整備のストック効果を、都市雇用圏と非都市雇用圏の相互関係を明示的に考慮して分析するとともに、分析から得られる示唆により投資配分のための評価および制度設計のあり方を明らかにすることを目的とする。H28年度においては特に、都市規模およびスピルオーバー効果等のモデル化に関する検討を重点的に行った。 第一に「概念的基礎と分析対象の明確化」について検討した.社会資本のストック効果の理論および実証分析に関する知見を整理し、特に地域の効果に関する地域区分・分析手法を整理した。地域の持続可能性の観点から,社会資本を広義の資本の観点からとらえるCW(Comprehensive Wealth)の概念と測度をレビューするとともに,都市経済における地域アメニティの評価に応用するための課題を整理した. 第二に「データ作成」について検討した.はじめに,上記の検討におけるCWデータについて,人的資本・自然資本・枯渇性資源の取得可能性を検討した.都市雇用圏データおよび社会資本ストックの市町村単位データ作成に関し、国勢調査および公共施設状況施設等については公的統計データを用いたデータ・セットの作成を行った.また,公会計の資産および固定資産台帳のデータ等の活用について,総務省改訂方式に計上されるデータの活用可能性を検討するため,首都圏の該当市町のデータ・セットの試作,および固定資産台帳の事例研究を実施した.これらについて次年度の実証研究に向けた整理を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年度の研究実施計画における概念的基礎の整理については、既往研究の検討により、包括的資本(CW)の理論と都市経済におけるアメニティの経済的評価の理論を統合的に検討することができ、特にSpill-Over効果の分析に関する示唆を得ることができた。 同じく、計画におけるデータ作成については、CWデータについて,人的資本・自然資本・枯渇性資源の取得可能性を検討することができ、また都市雇用圏データおよび社会資本ストックの、国勢調査および公共施設状況施設等については公的統計データを用いたデータ・セットの作成を行った.また,公会計の資産および固定資産台帳のデータ等の活用について,総務省改訂方式に計上されるデータの活用可能性の検討を開始することができた。ただし、市町村単位の地域データの関連データの追加作成については年度内に完成せず、少々遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度は概ね当初計画に則り、都市-非都市雇用圏の相互関係に関する要因発見的分析および社会資本のストック効果に関する理論モデル設定を実施する予定である。 H28年度に作成したデータにより、①都市雇用圏および②非都市雇用圏について、多変量解析手法を用いて類型化および整理を行う。また、③都市-非都市都市雇用圏の相互関係を人口・交流・物流・企業取引等により抽出する。その上で、都市雇用圏間、都市―非都市雇用圏間、非都市雇用圏間の相互関係について、同様に多変量解析により類型と構造、地域間のつながりを明らかにする。 またストック効果を①生産サイドのモデルを用いて設定する。Agenor(2013)の成長会計モデルを基本とし、収穫逓増モデルの知見等を検討する。②消費サイドについては、地価関数を推定するヘドニックアプローチ(資本化モデル)を基本とし、ストック効果の空間的自己相関等の知見を採り入れることを検討する。さらに、集積の経済を発生させるプロジェクトについての間接便益の議論(金本、2015)や、複数の外部経済を考慮する共便益(co-benefit)の効果を整理する。これらのストック効果に関する近年の知見とともに、要因発見の知見に基づく相互関係を明示的に取り入れた理論モデルを検討する。
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Causes of Carryover |
学会発表および調査の機会が新たに生じたため外国旅費が増加した一方,データ入力については市町村データの関連データの作成が遅延した部分について物品および人件費・謝金の支出が生じなかったため,次年度使用額が発生した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度請求額の内訳に対して,次年度使用額を物品および人件費・謝金,外国旅費に追加する予定である.物品および人件費・謝金については前年度継続分のデータ作成に,外国旅費については学会発表の追加分に支出する計画である.
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