2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K03639
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
木村 真 兵庫県立大学, 情報科学研究科, 教授 (50419959)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 世代重複モデル / 産業構造 / 医療介護 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、人口高齢化により医療介護産業の労働需給バランスが将来的にどのように推移するかを、多部門世代重複モデルの応用一般均衡分析を活用して明らかにしようという試みである。日本経済全体で人材不足が懸念されている今日、とりわけ医療・介護分野ではその懸念が大きく、政府でも人材確保に関するシミュレーションと政策の検討がなされている。 コロナ禍により、GDP等に対する政府の中長期の見通しが大きく変わったため、直近の状況変化を反映するのに苦心したが、研究計画のベースとなる閉鎖経済型で市場に摩擦の無い多部門世代重複モデル(14産業部門)を構築した。そして、人口高齢化による医療介護需要の増大によって社会保障負担が増加して経済成長は落ちるのか、それとも需要の増加が成長エンジンとなり他の産業にプラスの影響が波及することで経済成長が促進されるのかを分析した。シミュレーションの結果、医療・介護需要の増大は、短期的には BtoC 産業にプラスの効果をもたらすが、長期的には高齢化に財政再建の効果が加わって成長を鈍化させることなどが示された。また、政府の医療介護に関する労働需給の見通しは機械的試算によって行われているが、人材確保に際して他産業との間で競争となる部分が加味されていないため、他産業の労働需給などの影響も考慮している本研究に比べて就業者数の見込みが高めに出ることが示された。研究成果は、論文(英語)が雑誌に掲載された。これに加え、コロナ禍において医療介護を巡る状況も大きく変わってきており、昨年度は遠隔医療の進展について情報収集とファクトファインディングの分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2018年4月12日に厚生労働省から新たに医師の需給推計が公表された。この政府試算を本研究の多部門世代重複モデルのシミュレーションでも踏まえなければならないなど、政府試算のチェックために全体の進行が後ろにずれた。さらに、多部門世代重複応用一般均衡モデルについては、モデルの構築とデータセットの作成、現実再現性のチェックなどが進んでいた中でコロナウィルスの感染拡大によって経済が大きく影響を受け、それをシミュレーションに少しでも反映させる必要から時間がかかった。教育面でも通常と異なる対応を多く強いられたため研究になかなか時間を確保できない状況ではあったが、当初予定していた研究の根幹となる部分は、計画からは遅れたものの2020年度内に成果を得ることができた。ただし、研究成果をブラッシュアップするためにコロナ禍の影響を反映させる必要があったが、昨年度はデータが十分にそろっていない状況にあった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画においてベースと位置付けていた研究成果は得られ、モデルや分析手法をブラッシュアップを進めている。計画では市場に摩擦を考慮した分析も行うことを考えており、モデルの拡張と分析に取り組む。ただし、現在の状況では、シミュレーションを行うにあたってコロナ禍の影響が長期化しており、その影響を加味しないわけにはいかず、医療介護を巡る状況や産業構造への影響が定まっていない。ようやく2021年度末に最新の2020年のSNA産業連関表が公表され、コロナ禍の産業構造への影響などを反映させられる状況となったことから、企業や消費者の行動変容を考慮したシミュレーションを進め、多部門世代重複モデルを用いて分析したい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で出張が制限されたり学会がオンラインでの参加となったことで旅費の使用がなかったことや、コロナ禍の影響が反映されたデータが公表されて利用可能となったのが昨年度末であったことが大きな理由である。今年度は年度末に公表されたデータの収集と整理等にかかる人件費等に使用する予定である。
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