2018 Fiscal Year Research-status Report
中国全域の産業集積の複眼的考察:地点データ企業GIS地図の作成と空間計量経済分析
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16K03644
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
甲斐 成章 (徐涛) 北海学園大学, 経済学部, 教授 (90449538)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 産業集積 / 集積地 / 所有と集積 / 集積要因 / Flexible Scan法 / K-density関数 / 空間二項選択モデル / 国家資本政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中国製造業企業の地点データ(社区村)を構築し、GIS地図と集積地マップを作成し、空間統計分析をもちいて、中国の産業集積の現状と変動を調査・分析し、地域・産業・企業所有制から総合的に中国の産業集積を考察するものである。 平成28年度では、企業センサス個票データベースをもちいて、GIS地図データを作成・加工した。そのうえで、産業分布マップを作成した。 平成29年度では、中国の産業集積に関する空間統計分析をサーヴェイしたうえで、自動車とアパレル産業の集積マップを作成した。その際、Tango(2008)の解析手法をもちいた。管見の限り、これは、中国の製造業企業の点データをスキャンして作成されたはじめての中国本土全域の産業集積マップである。さらに、自動車産業について、従業員数加重のDuranton and Overman(2005)のK-density関数をもちいて、業種内、業種間、それに所有タイプ×業種のカテゴリ間の集積・共集積を計測した。どのような企業がどのような企業とどう分布しているのかについて、解明を試みた。管見の限り、これは、所有制と産業を総合的に分析視野に入れた初めての中国本土全域に対する産業集積空間統計分析である。 平成30年度では、産業集積の要因分析に着手した。内生性問題を回避・軽減するため、過年次の説明変数をもちいて、2008年の集積地に対する各要因のインパクトを分析すると考えており、そのため、2004年の製造業企業の地点データの構築が必要になった。莫大な時間がかかった大変繁雑な作業ではあったが、すでに2004年の地点データの作成に成功し、空間二項選択モデルをもちいた要因分析を実施しており、学会での発表を予定している。また、習近平時代において、国有企業改革に関する新しい動きが出てきており、これからの産業集積の行方を占うために、国家資本の行方にかかわる政策も調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は、APIを利用して、手作業ならおよそ10年がかかるGIS地図データの作成に成功した。それでも、予想外にセンサスデータベースに対応した社区村の調査、それに社区村の経緯度調査に莫大の時間がかかった。 平成29年度は、なるべく時間を取り戻したく、計算作業機械を増やして、産業集積マップの作成と共集積のK-density関数計算に臨んだ。しかし、広大な国土と膨大の企業数を有する中国の産業集積分析は、ハードウェアと時間の両面で大きな制約を受けた。 たとえば、FleXScanをもちいて集積地を検出した場合、α1を0.3、最大のクラスターサイズを60に設定して実施してみたところ、6週間が経っても1業種だけであっても、計算作業が1/3しか進まなかった。K-density関数の計算についても、たいてい1回(1カテゴリあるいは1ペアのカテゴリ間)の計算に数時間から10日前後はかかった。 平成30年度は、北海道地震時の停電などを受け、計算が幾度中断され、計算機の調整にも時間がかかった。また、すでに構築した2008年経済センサスのGISデータをもちいて、集積地の要因分析をこころみた。そこで、やはり説明変数の内生性問題に対処するため、古い年次のデータを回帰分析に利用する必要性が出てきた。そのため、2004年の第1次経済センサスのデータセットをGIS化するのに、莫大な時間がかかったが、すでに2004年のGISデータセットの構築に成功し、空間二項選択モデルによる集積要因分析を進めており、学会での発表を予定している。 以上の理由により、計画よりやや作業が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において、ハードウェアと時間からかなり大きな制約を受けた。しかし、研究のためのGISデータの構築は一段落になり、これによって、研究の品質が保障された。 これからも時間と精力を惜しまずに、研究の円滑の実施と高水準の研究成果の確保に努めたい。
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Causes of Carryover |
(理由)平成30年の北海道地震時の停電などを受け、計算が幾度中断され、計算機の調整にも時間がかかった。また、集積地要因分析の際の内生性問題に対処するため、2004年第1次経済センサスのGIS化を追加して実施した。そのため、莫大な時間を費やした。結果的に、研究の品質を確保することができた。しかし、時間の制約のため、研究計画の実施がやや遅れ、集積要因分析の完成と発表は次年度に移さざるをえなかった。また、なるべくセンサスデータの入手に拘ったが、第3次経済センサスのデータは今年になってやっと限定的かつ部分的な利用が可能になり、その公開が大幅に遅れた。 (使用計画)全力を尽くして研究計画を進めたい。今年度学会で発表した論文の掲載発表、その他高水準の研究成果の発表に努め、研究品質の確保にも細心の注意を払う。センサスデータの代わりのデータベースの選定も確実に進めている。
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