2019 Fiscal Year Annual Research Report
The impact of TPP on Japanese economy and labor market
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16K03653
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
後藤 純一 神戸大学, 経済経営研究所, 名誉教授 (70234987)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | TPP / 国際経済関係 / 国際労働力移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研の目的は、TPP協定が環太平洋地域の貿易関係および国際労働力移動にどのようなインパクトを与えるかを明らかにすることである。このため、国際経済学と労働経済学を融合させた国際労働経済学の視点に立って理論的・実証的研究を行ってきた。しかし、本研究はその過程で科研申請時には予期していなかった困難に直面することとなった。つまり、TPP協定は、当初はアメリカを含む12カ国で進められていたが、トランプ大統領就任によって中心メンバーたるアメリカが離脱することになり、分析のための根幹的フレームワークが揺らぐこととなったのである。このため研究は基本的な分析フレームワークの修正を余儀なくされたわけであるが、結局、分析の対象を広げ、厳しい国際経済情勢の中でアジア太平洋地域において最も望ましい地域的経済統合は何であるかを考えることとした。そして、以下のような知見を得た。 ①現在のTPP11はアジア太平洋地域の貿易低迷や経済的困難を打開するには十分ではなく, 米国や中国を含む拡大TPPの形成が重要である。 ②現在のTPP11は, 貿易創出を促進し貿易転換を少なくして加盟国の経済的利益をはかるために必要な「natural trading bloc」の条件を満たしているとは言い難い。たとえば,カナダやメキシコにとって, 米国は極めて重要なnatural trading partnerであり, 米国を含まないTPP11はあまり意味がない.同様に,アジア諸国の多くにとって,米国や中国は重要なnatural trading partnerであり, 両国を含まない貿易圏の役割は限定的なものとなる。 ③したがって.現行のTPP11にとどまることなく、米国や中国などを含む拡大TPPを形成することが国際貿易促進の観点からも、国際労働移動促進の観点からも重要である。
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Research Products
(1 results)