2017 Fiscal Year Research-status Report
開発途上経済の持続可能性に関する理論的研究:農村の資源管理と都市の失業
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16K03654
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大東 一郎 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (30245625)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 再生可能資源 / オープンアクセス / 二重経済 / 都市失業 / 資源財輸出税 |
Outline of Annual Research Achievements |
農村部門に再生可能資源ストックを導入したハリス=トダロ型小国開放経済モデルの論文の発表・改訂を進めている。
1.静学モデル(1)の論文を、国際学会(Winter International Trade Seminar)、国内の学会・セミナー(日本国際経済学会第76回(2017年度)全国大会、京都大学大学院国際経済セミナー)で発表し、コメントを得た。それをもとにして改訂版を作成し、国際学術雑誌への投稿を行っている。学会コメントやレフェリーレポートの内容を共同研究者との議論を通じて検討しながら、論文改訂を続けている。とくに、資源ストックの定常状態だけでなく移行動学経路上でも、資源ストックの過大利用の抑制と都市失業率の低下が両立可能であることが明らかになった。また、資源管理制度の内生的決定にまで分析を拡張することも出来てきている。
2.動学モデル(2)の分析からすでに得られている自給自足経済と小国開放経済との分析結果の違いがもつ経済学的意義について、共同研究者と議論を深めている。その中で、研究論文としてのストーリー作りに関して新たな着想を得つつある。すなわち、「貿易と環境」で周知のBrander and Taylor(1997,1998)の論文では、適用事例として発展途上国が多く挙げられているにもかかわらず、これら諸国に特有の二重経済構造が明示的にモデル化されていない。動学モデル(2)はこの点を考慮して分析を拡張したものであるとの意義づけができるであろう。そして、農村都市間の人口移動過程と再生可能資源動学との相互作用を考慮に入れたとき、農村の再生可能資源ストックが枯渇する可能性を都市失業率との同時決定で検討した研究とみることもできる。また、完全雇用均衡について、関数形を特定化したモデルの数値解の挙動をMatlabを活用して調べる作業も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.静学モデル(1)論文については、予定通り、国内外の学会・セミナー等で発表するとともに、国際学術雑誌への投稿を実施して、批判やコメントを得ることができている。それに基づき、定常状態に収束してゆく移行動学経路に関する新たな分析や資源管理制度の内生的決定といった新たな分析や考察を加えることができるようになった。
2.動学モデル(2)の結果をいかにして意義づけるかを考察してきたが、上記の「研究実績の概要」に述べたように、「貿易と環境」の研究から出発するストーリー立てで論文原稿を書く、という基本方針を固める段階に到達することができた。静学モデル(1)の論文で資源ストックの移行動学経路上の明示的な分析ができたので、資源ストックと都市失業率の2変数システムの分析結果がそれとどのように異なるかを、この新論文の貢献として主張するという展開も期待できるであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
1.静学モデル(1)の論文については、レフェリーレポートにもとづいて改訂し、学術雑誌への掲載を目指す。
2.動学モデル(2)については、すでに導いた自給自足経済と小国開放経済のモデルの分析結果にもとづき、経済学的意義を明確に示せるような上記のストーリーで原稿を書き進める。初稿を慶應義塾大学経済研究所のディスカッション・ペーパーに登録し、学会発表を開始する。
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Causes of Carryover |
2017年度は、学会等の発表でコメントを得て共同論文を改訂し学術雑誌への投稿を行う活動が、大きな比重を占めた。国際学会が日本国内で開催され旅費が少なくて済んだこと、国際学術雑誌投稿料が(学会費の支払いの形であったため)所属大学の研究経費で賄えたことなどにより、科学研究費補助金の使用を節約することができ、次年度使用に回せる余裕ができた。
2018年度には、進行中の共同論文の学会発表と投稿を継続するだけでなく、新しい論文のためのモデル分析やストーリー作りを進めるために、共同研究者と面会して討議することに一層注力する必要がある。そのための図書費や旅費に充当するとともに、論文作成の効率を高めるため機器(パソコン等)・論文作成ソフトを充実させるためにも使用する計画である。
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