2018 Fiscal Year Research-status Report
開発途上経済の持続可能性に関する理論的研究:農村の資源管理と都市の失業
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16K03654
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大東 一郎 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (30245625)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 再生可能資源 / オープンアクセス / 二重経済 / 都市失業 / 資源財輸出税 |
Outline of Annual Research Achievements |
農村部門に再生可能資源ストックを導入したハリス=トダロ型小国開放経済モデルの論文の発表・投稿・改訂を進めた。
1.静学モデル(1)の論文は、昨年度に続いて国際学会(Econometric Society Asian Meeting 2018、The 6th World Environmental and Resource Economists)、国内学会(日本経済学会2018年度全国大会)でも発表し、コメントを得た。それらをもとに論文改訂を続けてきたが、今年度は、前半部の主要な論点を大きく変更する改訂を行うことができた。そのポイントは、資源ストックの過大利用の抑制と都市失業率の低下が両立不可能であることを導き、これら2つの目標を両立させる最適政策を明らかにするというストーリーを立てたことである。この最適政策の導出は、先行研究にない新たな貢献である。さらに、後半部では再生可能資源の管理制度の内生的決定を明示的に考慮に入れ、資源財の輸出税や工業品の輸入関税により、農村資源のオープンアクセスや都市の固定賃金といった制度的失敗を解消する誘因が働きうるかまで分析を進めることができた。上記の改訂を行った原稿を、共著者の大学のワーキングペーパーとして刊行し、国際学術雑誌に投稿している。
2.動学モデル(2)の論文については、分析結果を見ながら、真に興味深い論点は何かについて再び共著者との間で共通理解を確かめる必要が生じた。「貿易と環境」の研究との関連性を中心にストーリー立てができるという見通しはあるものの、議論を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.静学モデル(1)論文については、国際学術雑誌への投稿を実施し、そこで得た批判やコメントに基づき、新たな分析や考察を加えることができた。論文の改訂版をハワイ大学経済学部のワーキングペーパーとして刊行し、学術雑誌への投稿も行っている。
2.動学モデル(2)の結果をいかにして意義づけるかを考察してきたが、静学モデル(1)の論文で資源ストックのみ1変数システムでの移行動学経路を明示的に分析できたので、資源ストックと都市失業率の2変数システムの分析結果がそれとどのように異なるかを、新たな論文の貢献として主張するという展開も期待できるであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
1.静学モデル(1)の論文は、投稿先からのレフェリーレポートにもとづいて改訂し、学術雑誌への掲載を目指す。
2.動学モデル(2)については、自給自足経済では再生可能資源ストックの枯渇が生じる場合があるのに対して、資源財の貿易のある小国開放経済では資源ストックの枯渇が生じえないという違いを中心に論文にすることを検討する。また、静学モデル(1)の論文で資源ストックのみ1変数システムでの移行動学経路を明示的に分析できたので、資源ストックと都市失業率の2変数システムの分析結果がそれとどのように異なるかを、新たな論文の貢献として主張するという展開も期待できるかもしれない。
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Causes of Carryover |
国際学会での発表に係る経費や論文原稿の英文校閲料を、所属大学内の研究費や助成金(慶應義塾学事振興資金)で賄えたため、科学研究費補助金の支出を節約することができた。
2019年度には、進行中の共同論文の投稿を継続するだけでなく、新しい論文のためのモデル分析やストーリー作りを進めるために、文献調査や共同研究者との討議に一層注力する必要がある。そのための図書費や旅費、投稿料、英文校閲費に充当するとともに、論文作成の効率を高めるため機器(パソコン等)・論文作成ソフトを充実させるためにも使用する見通しである。
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Research Products
(5 results)