2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K03655
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
直井 道生 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 准教授 (70365477)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 中古住宅市場 / サーチ / マッチング / 不動産価格 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国の中古住宅市場は、諸外国と比較して取引のボリュームが極めて小さいことが知られている。中古住宅市場の活性化は、我が国が直面する重要な政策課題であるが、どういった要因が市場の活性化を阻害しているのか、また、政策的な介入がどの程度のインパクトを持つのかといった点については、必ずしも実証的なエビデンスが得られているわけではない。 本研究課題は、(1) 我が国の中古住宅におけるマッチング効率性の計測、およびそれに基づく (2) 取引件数および価格水準への影響の評価、という2点を目的としている。(1)については、マッチング関数の推定を通じて、中古住宅市場の規模拡大がマッチング効率の改善につながるという仮説を検証する。(2)については、マッチング効率の改善が取引件数の増加と価格上昇をもたらすという仮説を検証する。そのうえで、これらの実証結果に基づいて、中古住宅市場を対象とした各種政策の定量的評価につなげることを最終的な目的とする。 上記の問題意識に基づき、研究期間の第3年度に当たる平成30年度には、主に上記の(2)の課題について、中古市場におけるマッチング効率性が住宅取引および価格水準に与える影響を検討した。具体的には、研究目的での利用が認められた大規模な家計パネルデータである「日本家計パネル調査」(Japan Household Panel Survey, JHPS) を利用し、地域別流通物件数などの市場特性が、住宅購入者のサーチ行動および購入する住宅価額におよぼす影響を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に記載した方向に沿って、住宅市場のサーチモデルの実証分析を進めた。具体的には、昨年度実施した家計パネル調査を用いた家計の住宅取得行動に関する検討をさらに進め、マーケットごとの市場特性を考慮に入れた分析を実施した。さらに、関連する研究成果をWestern Economic Association International、International Conference on Sustainable Development、応用地域学会などの国内外の学会で報告し、研究成果の発信に努めた。 上記のとおり、個別の研究トピックの分析、研究成果の発信とも、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、これまでおおむね順調に進展しており、今後も当初の研究計画・方法に沿った形で、進めていく予定である。 平成31年度は、これまでに構築したデータセットおよびこれに基づく実証分析の結果を踏まえ、研究成果の総括とさらなる研究成果の発信を行う。研究成果は、国内外の学会などで積極的な報告を行ない、査読付き学術雑誌などへの掲載を目指す。また、個別の分析課題としては、これまでに実施したサーチ行動の実証分析に、市場参加者の異質性および(買い手と売り手の)マッチ固有の質といった要因を考慮することで、さらなる分析の拡張・精緻化を試みる。加えて、分析結果を踏まえた政策評価にも取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
サブマーケットごとの詳細な取引件数および市場特性について、各種公的統計の小地域集計の結果などを活用した分析を行ったため、次年度使用額が生じている。ただし、より詳細な分析を行うに当たっては、データセットの購入などが必要となるため、追加的な支出が必要となる。
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Research Products
(10 results)