2016 Fiscal Year Research-status Report
価値あるイノベーションにおける組織管理の重要性:企業個票データによる定量分析
Project/Area Number |
16K03661
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
羽田 尚子 中央大学, 商学部, 准教授 (80384022)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 組織マネジメント / 研究開発 / 特許 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、先行研究のサーベイを行った。イノベーションと組織マネジメントに関して用いられてきた理論的枠組みを調べると共に、その理論がどのようなデータやモデルでテストされているか、データを用いた定量分析を行っている文献も調査した。先行研究で一般的に用いられているCISに対応したデータとして、日本では「全国イノベーション調査」がある。全国イノベーション調査の個票利用申請を文部科学省に提出し使用許可を得た後、本データを特許データと接合した。特許データは、IIPパテントデータベースを用いた。イノベーション調査回答企業のうち、営業利益や従業員数といった基礎的な情報を回答していない企業はデータの信頼性を担保できないものとみなし、本分析の対象からは除外した。その結果、分析対象企業数は3837社となった。これらの企業の特許出願数や共同出願者のタイプを、IIPパテントデータベースの情報をもとにまとめ概観した。分析対象とする企業から出願された特許は、2006年から2009年の3年間で約1万件あり、そのうちの約85パーセントは単独で出願されていた。共同出願されたもののうち、約90%は、他の企業と共同で出願されていた。組織マネジメントの取り組みを特許出願の有無により分類したところ、いくつかの取り組みは、出願の有無により差がみられた。発明報奨制度や研究成果に連動した評価を導入している企業の割合は、特許を出願している企業の方が有意に高かった。一方、異なる事業間でのチーム・会議の実施といった事業間協力関係は、特許出願の有無にかかわらず約半数の企業が導入していた。本年の分析と得られた結果は論文にまとめ、書籍の一章として出版予定である(Springer bookより2017年夏を予定)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに進捗している。当初の予定からの変更点は、平成29年度に実施予定だった特許データとの接続を、平成28年度に行った。これは信用調査会社からデータを購入する際、対象企業に優先順位をつける必要があったためである(多くのデータと接合できる企業を最優先としたいため)。また、組織マネジメントとイノベーション活動に関する初歩的な分析を行うことができたため、指標の有効性や組織と成果との関係に関するコメントを得る目的から、得られた結果を論文にまとめたことも変更点である。その英文校正費および報告のための海外渡航費ねん出のため、平成30年度申請分の一部を前倒し請求した。平成30年度の減額分は、校正枚数や報告先の変更で対応可能なため、研究目的の達成には大きな問題は生じない。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度までに作成したイノベーション企業データベースの拡張を行う。組織マネジメントがイノベーションに与える影響やそのプロセスについて、研究者やプロジェクトマネジャーといった研究開発に携わる人材(20名程度)にインタビューを実施する。研究開発組織の年齢構成、性別や国籍の構成についてもヒアリングを行う。特許データの発明者情報に基づき、外部研究リソース(人材)の活用、研究チームの性別、国籍などの構成を調べたうえで組織の多様性を表すデータを作成する。
|
Causes of Carryover |
英文校正回数が予定より1回少なくすんだため、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の企業データベース拡張と、インタビュー調査に使用する。
|
Research Products
(2 results)