2018 Fiscal Year Research-status Report
地方人口の増加を促す補助政策と失業下の地域産業への影響について
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16K03664
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
松崎 大介 東洋大学, 経済学部, 准教授 (00389610)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地方への補助政策 / 内生的な人口要素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究により,政策実施前に土地補助以外の補助がゼロである場合,補助政策の変更の影響は,以下の2つの効果に絞られることが判明した。1つは2財の相対価格を変える交易条件効果であり,もう1つは失業が存在する地域に働く雇用創出効果である。 この下において,両地域が完全雇用の場合,失業が無いため雇用創出効果は存在せず,交易条件効果のみが両地域に働く。地方の産業が労働集約財(土地集約財)である場合には,補助政策の変更は,地方への人口移動を通じて両地域の労働賃金を引き上げ,労働集約財の相対価格を上昇(下落)させ,地方住民の厚生で改善(悪化)させる。一方,地方は完全雇用であり,都市のみ失業が存在する場合,交易条件効果は存在しない。都市の賃金硬直性は,企業の利潤最大化を通じて,生産財の相対価格を一定とするためである。このとき,政策変更による地方への人口移動は,期待賃金増により都市の雇用を改善する一方,地方は賃金上昇と土地補助・土地収益の減少が相殺し,その所得および厚生は変化を受けない。さらに,両地域に失業が存在する場合も,交易条件効果は存在しない。土地補助から生産・雇用補助への政策変更は,地方企業の雇用促進を通じて,両地域の期待賃金を引き上げる結果,両地域住民に雇用創出効果をもたらし厚生を改善する。一方,土地補助から労働補助への変更は,なんら生産を増やさずに地方への人口移動を生じるため,地方(都市)の失業が悪化(改善)し,地方(都市)住民の厚生を悪化(改善)させることが判明した。都市は完全雇用であり,地方のみ失業が存在する場合,交易条件効果と雇用創出効果は両方存在し,交易条件効果の大きさに依存して,各地域住民の厚生への影響が異なることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画当初は予定していなかった子の出生などがあり,研究計画がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
結果の現実経済への具体的な適応例に関し,なおいくつかの言及ができると考えている。日本やEUの事例を参照し研究成果に反映させる。
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Causes of Carryover |
昨年度は家庭の事情のため,年度後半における研究会合への参加が十分にできなかった。本年度は研究会合への参加費用として使わせていただきたい。
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