2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K03679
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
木下 信 龍谷大学, 経済学部, 講師 (60396265)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エネルギー選択 / 再生可能エネルギー / 節電 / コンジョイント分析 / 電力・ガス自由化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は節電行動のコンジョイント分析を様々なセミナーや学会で報告した。 論文タイトル「エネルギー源とそのリスクが節電行動に与える影響:コンジョイント分析による計測」、報告学会:日本経済学会秋季大会(早稲田大学)2016年9月10日 論文タイトル"The conjoint analysis about the effects of energy sources and their risk on households' energy saving"、報告学会:日本経済政策学会国際会議(函館大沼セミナーハウス)2016年10月31日、論文は龍谷大学のDiscussion Paper Seriesにも掲載している。 論文の内容:2011年3月の東日本大震災以降、日本を取り巻くエネルギー環境は大きく変わりつつある。原子力発電所の再稼働が思うように進まず、家庭でも節電の必要はあると思われる。家庭にアンケートを実施し、家庭が節電する要因をコンジョイント分析した。要因として1カ月当たりの電気料金、CO2排出量、停電の可能性とその時間、主に使用する電源(原子力、石炭火力、天然ガス火力、太陽光、風力)を考えた。その結果、電気料金が上昇する、停電時間が長くなることが節電に大きく影響すると分かった。今後のエネルギー政策として再生可能エネルギーの普及が重要である。再生可能エネルギーは一般的に供給が不安定といわれ、そのような問題を考慮して家計には評価してもらう必要がある。再生可能エネルギーにこのような供給の不安定性があれば家庭もさらに節電すると思われる。 もう1つ、"Estimation of household's preference for energy sources by conjoint analysis in Japan",龍谷大学Discussion Paper Seriesがある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度後期に家計にコンジョイント分析のためのアンケートを実施した。その論文を2017年9月に行われる日本経済学会秋季大会(青山学院大学)で発表する予定である。その英語版も作成しており、11月に日本経済政策学会国際会議(沖縄自治会館)で発表する予定である。その他、様々なセミナーでの発表も予定している。英語版を国際的なジャーナルに投稿予定である。論文は現在龍谷大学のDiscussion Paper Seriesにも掲載している。 論文タイトル:家計のエネルギー選好が節電・省エネ機器選好に及ぼす影響 概要:2011年3月の東日本大震災以降、日本を取り巻くエネルギー環境は大きく変わりつつある。原子力発電所の再稼働が思うように進まず、原子力やCO2排出を伴う火力に代わる新しいエネルギー源として再生可能エネルギーが注目されている。一方で家庭でも節電の促進や省エネ機器の普及が必要はあると思われる。本論文では家庭にアンケートを実施し、家庭が節電するあるいは省エネ機器を選択する要因をコンジョイント分析した。要因として、年間電気料金、初期費用、補助金の有無など金銭的要因とCO2排出量、供給の安定性、主に使用する電源(原子力、天然ガス火力、太陽光、風力)といった非金銭的要因を考えた。その結果、年間電気料金や初期費用の低下など金銭的な要因が選択確率を上昇させる一方で供給安定性、使用するエネルギー源が再生可能エネルギーであることが選択確率を上昇させることが分かった。これらのWTPも大きかった。再生可能エネルギーの普及と節電、省エネ機器の普及が日本での重要なエネルギー政策と考えているが、再生可能エネルギーを利用した省エネ機器の普及は見込めると分かった。その際、再生可能エネルギーは天候に左右されるため供給安定性を確保するためにも蓄電池の普及も不可欠である。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度も家計に対してアンケートを実施する予定である。2017年にはガスも自由化された。その結果、家計は様々な企業から電気・ガスを調達することが可能となった。2017年度はガス産業にも重点をおいて研究する予定である。 エネルギーの事業者選好の計測である。電力自由化から1年が経過し、家計がどのように事業者を変更したかを調査する。これまではコンジョイント分析といった表明選好を用いてきたが、顕示選好による分析も可能と考えている。同時に補助的に表明選好も取り入れ、変更要因を明らかにする。 蓄電池に対する選好計測も予定している。前回の研究より分かったことだが、再生可能エネルギーは天候に左右され、電力の供給が不安定になりがちである。そこで蓄電池が普及すればこの問題は多少解決される。蓄電池はエコファームに代表されるようにガス会社が主に販売している商品であり、ガスの自由化とともに普及が見込まれる。再生可能エネルギーの普及、省エネ機器の普及、低価格での電力・ガスの供給も蓄電池の普及が大きな鍵を握ると考えている。蓄電池の選好に関心を持った理由として、2016年度に発表した論文に関連するが、エネルギーには数々のリスクも存在する。その1つが供給不安定のリスクである。東日本大震災以降、日本のエネルギーを取り巻く環境が大きく変わった。大地震という大きな災害を経験し、大災害へ備えるという観点からもエネルギーの問題、とりわけ蓄電池への選好を取り扱ってみたい。 現在、エネルギー選好の研究と平行して、エネルギー産業の多角化、グローバル化の研究にも着手している。以前帝京大学の橋本悟氏とガス産業の費用・生産の効率化に関する論文を書いた。大阪ガスの研究会に出席した際も自由化後のガス会社の経営として国内で需要が縮小する中、他分野への進出や海外進出が必要と伺った。費用関数を用いて多角化の効果を実証分析する予定である。
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Research Products
(4 results)