2019 Fiscal Year Annual Research Report
The Effect of an Increase in an Interest Rate Risk Premium on Business Cycles in a Small Open Economy Facing Social Turmoil and Its Mitigation
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16K03683
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
鈴木 智也 関西大学, 経済学部, 教授 (40411285)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 難民 / 欧州 / 一般化線形モデル / 負の二項分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
前々年度の実施状況報告書で触れたように、社会的混乱に陥った国の景気変動では、利子率のリスク・プレミアム拡大の影響だけでなく、労働者の流出による影響も大きいことが本研究を通じて判明してきた。しかしながら、本研究に対しては、流出する労働者が移民なのか難民なのかを区別すべきであると、学術誌の査読コメントや学会報告の質疑応答で批判がなされてきた。そこで、前年度に引き続き、難民申請者が移民とは異なって命からがら祖国を逃れてきているだけなのか、それとも移民と同様に経済的な動機で移住先を選んでいるのかを分析した。 難民申請者による移住先のサンプルとしては、アイスランドを除く、経済開発協力機構に加盟している欧州の25か国を選んだ。一方、難民申請者の出身国のサンプルとしては、紛争経験国であるアフガニスタン、イラク、シリアの3か国を選んだ。サンプル期間は、アフガニスタン紛争の開始時期である2001年から、トルコと欧州連合が難民対策で合意した2016年までとした。被説明変数が難民申請者数で常に非負の整数となるため、負の二項分布を仮定し、一般化線形モデルを用いた。報告を重ねてコメントを盛り込むうちに、モデルは洗練されて結果も安定したが、最終的な結論は前年度の実施状況報告書で述べたものと異なった。重要な結論の一つは、欧州の各国における雇用者一人あたりの所得は上記三か国から難民申請者を有意に引き寄せるというものである。なかでも、シリアとイラクの難民申請者数については、欧州各国での雇用者一人あたりの所得に対する弾力性が1を超えている。したがって、祖国を追われるという背景はあるにせよ、難民申請者も移民と同様に経済的な理由で移住先を選んでいることが示唆されている。このことは、移民と難民を区別していない前年度までの本研究の方向性を支持するものである。
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