2016 Fiscal Year Research-status Report
国際資本移動とアニマルスピリッツ-世界恐慌を避けるための国際協調政策に関する分析
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16K03685
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
國枝 卓真 関西学院大学, 経済学部, 准教授 (60511516)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 一般均衡 / アニマルスピリッツ / 金融危機 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、外因的な不確実性(extrinsic uncertainty)によって引き起こされる景気変動や金融危機を分析するための基本的な理論モデルを構築し、得られた結果をいくつかの論文にまとめた。その理論モデルは来年度以降に動学的一般均衡多国モデルに拡張するためのもので、本年度は閉鎖経済を扱った。論文にまとめた結果は、どれも重要なものであった。一つ目は、二部門一般均衡モデルを構築して、消費の外部効果があるとき、どのように心的要因に起因した内生的景気変動が発生するかを分析した。これは二種類の消費財を考えて、そのうち一つの消費財が、加法分離的な効用関数のそれぞれの消費財に関連付けられた項に対して外部効果を持つときに、内生的景気変動が起こる条件を明らかにした点が過去の文献と比較して新しい。二つ目も二部門一般均衡モデルを構築したものである。労働や資本が生産に外部効果を持つという状況では、心的要因に起因した内生的景気変動が発生するということは、既存の理論モデルによる分析ですでに明らかになっている。この研究では、そのような既存のモデルに借入れ制約を導入して分析を試みた。この分析により、借入れ制約が厳しいときには、心的要因に起因した内生的景気変動が発生しにくくなるという結果を得ることができた。これは金融市場の発展と経済の不安定性の関係を扱った研究に大きく貢献するものである。三つ目は、経済主体の期待に裏づけされたバブルの発生が失業率にどのような影響を及ぼすかを分析した。この分析では、金融市場が不完全な経済においてバブルが発生すると、生産の効率が改善されて失業率が低下する可能性があるということを示した。バブルの発生と失業率の関係を扱った研究は他に多くはないので、この分野への貢献は大きいはずである。今年度は、閉鎖経済だけを扱ったが、来年度以降、基本モデルを応用して開放経済の分析に進んでいく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までのところ、本研究プロジェクトは予定通り順調に進展している。本年度は、来年度以降の開放経済の分析につなげるための基本モデルの構築に集中した。その結果、多国モデルへの拡張が可能な、金融市場の不完全性を導入した二部門一般均衡モデルを構築することができた。当初、無限期間生きる経済主体を仮定して、金融市場の不完全性を二部門一般均衡モデルに導入することは大変難しいものであると思われたが、様々な試行錯誤の結果、これに成功したことは本年度の大きな成果である。本年度は、閉鎖経済の分析にとどまったが、それでも新しく構築した二部門モデルを使った分析では、国際ジャーナルへ投稿できるほどの結果が得られた。また、金融市場の不完全性を導入した一部門の一般均衡モデルの分析も引き続き行っており、これについても論文を仕上げることができた。一方で、他の研究者とアイディアを交換し交流するために、海外や国内の様々な研究者を招いて研究集会を開催した。その研究集会によって刺激を受け、自分自身、新しいアイデアを醸成させることができ、本年度の研究に大いに役に立てることができた。特に、本年度構築した基本モデルを、来年度以降、開放経済の分析に応用するための重要なヒントを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、今年度構築することができた金融市場の不完全性を導入した二部門一般均衡モデルを開放経済の分析に応用していく予定である。その第一段階として、二国モデルを構築する。このモデルは、ヘクシャー=オリーン・タイプの動学的一般均衡貿易モデルとよく似た構造になっているが、金融市場の不完全性を導入しているために、経済主体の国際金融市場での借り入れ・貸し出し行動が、貿易パターンの決定に大きな影響を及ぼす。特に、金融制約の国ごとの強弱の違いが貿易パターンを決定するという結果が得られるかもしれない。この結果が得られるとするなら、大きな貢献となるはずである。さらには、本プロジェクトの中心的な課題である国際的な景気変動を分析するために、この二国モデルに外因的な不確実性(extrinsic uncertainty)を導入していく予定である。この導入によって、ある国で心理的要因に起因した内生的景気変動が発生した場合、どのように他国に波及するのかということを分析できるということが期待される。その分析において、国ごとの金融制約の強弱の違いが、景気変動の波及にどのように影響を及ぼすかを分析できるはずである。
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Causes of Carryover |
執筆した論文の一つを国際ジャーナルへ2016年度内に投稿したが、その投稿料が年度をまたいで請求される予定であるために次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文の投稿料の支払いに使用する。
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Research Products
(3 results)