2019 Fiscal Year Research-status Report
国際資本移動とアニマルスピリッツ-世界恐慌を避けるための国際協調政策に関する分析
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16K03685
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
國枝 卓真 関西学院大学, 経済学部, 准教授 (60511516)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 金融市場の不完全性 / 経済成長 / 内生的景気循環 / サンスポット / 中位所得の罠 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、内生的景気変動を分析するための基本的モデルを拡張し、二つの研究論文を完成させた。一つ目は、経済主体が多期間生きる世代重複モデルに金融市場の不完全性を明示的に導入して、内生的景気循環、特に、カオスが生じる条件を分析した。この論文は、国際的ジャーナルであるInternational Journal of Economic Theoryに採択されて出版された。二つ目は、二部門動学的一般均衡モデルを用いて、生産の外部性に直面した閉鎖経済において、経済主体の期待によって引き起こされた内生的景気変動の振幅が、金融市場の発達によって拡大されるのか、それとも収縮されるのかを分析した。また2018年度より引き続いて行っているいくつかのプロジェクトも完成に近づきつつある。一つは、バブルが生じたままの内生的景気循環が生じるような動学的一般均衡モデルの分析であるが、金融市場が発達していくと内生的景気循環を増幅してしまうという結果を得た。この論文は現在投稿に向けて改訂中である。また同じく、2018年度から引き続き行ってきた経済成長の実証研究であるが、この研究は2019年度完成し、現在のところ国際的ジャーナルに投稿中である。昨年度の研究実績の概要でも説明したが、この研究では、技術の国際的な伝播の影響の違いがある可能性に着目して、東アジア諸国の成長パターンを明らかにしたものである。中位所得の罠に関する研究も、国内外の共同研究者と共に引き続き行っており、ほぼ完成までこぎつけた。このモデルでは、知識資本の生産関数のパラメータを現実のデータを用いてカリブレートし、そのパラメータを分析することにより、先進国から発展途上国まで14か国のそれぞれが、どのタイミングで中位所得の罠に陥ったかを分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、当初本研究プロジェクトの最終年度だったこともあり、これまで得られた主な研究成果を国内外の学会やコンファレンスで報告する年と位置付けていたが、身内の不幸と新型コロナウイルスの世界的な蔓延が重なり、いくつかの学会やコンファレンスでの研究報告をキャンセルせざるを得なかった。そのために、本研究プロジェクトの期間を一年間延長した。このような予想外の事態が発生したにもかかわらず、研究自体は、ほぼ予定通りに進展しており、これまで5本の研究論文を国際的ジャーナルに出版できたことは、十分満足のいく結果であるといえる。本研究プロジェクトの期間を一年間延長したことで、いくつか進行中の新しい研究も完成させることができそうである。その中には、国内外の研究者と共同で行っているものもあり、更に充実した研究成果を得ることが期待できそうである。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、新たに本研究プロジェクトの最終年度と位置付け、新しい研究を完成させて、当初の予定通り内外の学会やコンファレンスで報告していくことを目標にする。2018年度から引き続き行っている失業とバブルの関係を世代重複モデルで分析した論文は、2020年5月の時点で、国際的ジャーナルに採択されたので、これは2020年度の研究実績として来年報告できる。繰り返しになるが2020年度は最終年度なので、これまで出版してきた論文に加えて、進行中の経済成長に関する論文、バブルと失業を動学的一般均衡モデルで分析した論文、及び、金融市場の発達が内生的景気循環を増幅させてしまうということを動学的一般均衡モデルで分析した論文を国際的ジャーナルに投稿することを目指す。
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Causes of Carryover |
国内外の学会やコンファレンスで研究成果を報告する予定であったが、身内の不幸と新型コロナウイルスの蔓延により、いくつかの学会・コンファレンスを欠席せざるをえなかった。次年度には、今回繰り越した額を使用して、当初の予定通り国内外の学会で研究成果を報告する予定である。
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Research Products
(1 results)