2016 Fiscal Year Research-status Report
子供のいる世帯への社会保障政策の効果検証―効率性と公平性の観点から―
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16K03699
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中村 さやか 名古屋大学, 経済学研究科, 准教授 (20511603)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 子供 / 社会保障 / 給食 / 社会経済的地位 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者と研究協力者(シドニー工科大学 丸山士行)の共著論文“The Effect of School Lunch on Early Teenagers’ Body Weight”を、日本経済学会2016年度春季大会、医療経済学会第11回研究大会、2016 Asian Meeting of the Econometric Society、8th Japan-Taiwan-Korea Health Economics Associations Joint Conference、関西労働研究会、および富山大学経済学セミナーで発表した。得られたフィードバックをもとに論文を改稿し、査読付国際学術誌への投稿準備を整えた。同論文は今年7月の国際学会12th World Congress of the International Health Economics Associationの口頭発表にも採択されている。この論文では、学校給食が中学生の体型に与える影響を個人レベルのデータを用いて検証した。全体ではボディマス指数(BMI)、肥満、痩せすぎのいずれの指標においても有意な影響は認められない。しかし社会経済的地位の低い世帯の子供に限定して分析すると、給食があると有意に肥満が減少するという結果が得られた。学校給食が肥満を減少させるという実証結果は世界的にもほとんど存在しないため、この研究成果は諸外国の学校給食をめぐる議論にもインパクトを与えることが期待される。また、日本では現在、公立中学校の生徒のうち約2割は学校給食を提供されていないが、本研究は学校給食拡大と質の確保が子供の肥満抑制につながる可能性を示唆している。 さらに、日本の社会保障制度改正が母子世帯に与えた影響について日本及び海外の先行研究のレビューを進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、1年目には子供の生まれ月を認可保育所への入所の操作変数として用い、保育所利用が女性就労や子供の成育に与える影響を操作変数法により検証する予定であった。しかし、日本でも子供の教育を重視する親が「早生まれ」の子が保育所入所や進学に不利になることを考慮して妊娠時期や出産時期をコントロールしているという研究が最近発表された。この結果は生まれ月が操作変数として不適切であることを示唆しているため、当初の計画通りに研究を進めることは困難になった。 しかし、代わりに給食が子供の体型に与える影響についての論文をほぼ完成させるとともに、日本の社会保障制度改正が母子世帯に与えた影響について先行研究のレビューを進めることができたため、全般的な進捗状況としては概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は母子及び寡婦福祉法改正の影響についての分析を行うため、21世紀出生児縦断調査、21世紀成年者縦断調査、全国母子世帯等調査、国民生活基礎調査、国民健康・栄養調査、人口動態調査、等の公的調査の調査票情報の利用申請を行う。利用が許可されたデータを用いて回帰分析を行い、分析結果を論文にまとめ、国内および海外の学会報告に投稿する。 また、研究論文“The Effect of School Lunch on Early Teenagers’ Body Weight”を研究会や国内外での学会で発表し、査読付国際学術誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
研究代表者の中村がオーストラリアに渡航し、研究協力者であるシドニー工科大学の丸山士行と研究打ち合わせを行う予定であったが、丸山が別用務で訪日した際に中村と研究打ち合わせを行うことができたため、中村のオーストラリアへの渡航費が不要となった。また中村は当初の計画通り国際会議での研究発表を2回行ったが、うち一回は国内での開催であり、もう一回は招待講演のため参加費が免除され主催者により宿泊所が提供された。そのため、国際学会での研究発表のための費用が予定より少なくすんだ。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度に、研究打ち合わせのために6月に丸山が日本に渡航し、年度後半に中村がオーストラリアに渡航することで、初年度に計上していた海外旅費を使用する計画である。
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Research Products
(5 results)