2017 Fiscal Year Research-status Report
子供のいる世帯への社会保障政策の効果検証―効率性と公平性の観点から―
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16K03699
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中村 さやか 名古屋大学, 経済学研究科, 准教授 (20511603)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 子ども / 社会保障制度 / 給食 |
Outline of Annual Research Achievements |
給食が子供の体型に与える影響について分析した研究代表者と研究協力者(オーストラリア シドニー工科大学准教授 丸山士行)の共著論文 "The Effect of School Lunch on Early Teenagers’ Body Weight" について、国際学会 "2017 Australian Conference for Health Economists of Australian Health Economics Society" および"12th World Congress of the International Health Economics Association"で口頭発表を行うとともに、東京労働経済学研究会でも研究発表を行った。同論文は "Wholesome Lunch to the Whole Classroom: Short- and Long-Term Effects on Early Teenagers’ Body Weight" と改題した上で、今年の国際学会 "The European Health Economics Association, EuHEA 2018 Conference" の口頭発表にも採択されている。また、国際学会 "21st World Congress of Epidemiology of International Epidemiological Association"において"Difference-in-Differences Studies in Health Economics: Possibilities and Pitfalls"と題した発表を行った際にも、差の差モデル (difference-in-differences model) の応用例の1つとして同論文について紹介した。 この論文では、学校給食が中学生の体型に与える影響を個人レベルのデータを用いて検証した。全体ではボディマス指数(Body Mass Index, BMI)、肥満、痩せすぎのいずれの指標においても有意な影響は認められない。しかし社会経済的地位の低い世帯の子供に限定して分析すると、給食があると有意に肥満が減少するという結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科研費応募時点の計画では、1年目(28年度)には子供の生まれ月を認可保育所への入所の操作変数として用い、保育所の利用可能性が女性就労や子供の成育に与える影響を操作変数法により検証し、2年目(29年度)以降は1年目に得られた研究結果を論文にまとめ、内外の学会や研究会で発表するとともに査読付国際学術誌への投稿準備を進める予定であった。しかし、日本でも保育所入所や子供の教育を重視する親が、「早生まれ」の子が保育所入所や進学に不利になることを考慮して、妊娠時期や出産時期をコントロールしているという研究が最近発表された。この結果は生まれ月が操作変数として不適切であることを示唆しているため、当初の計画通りに研究を進めることは困難になった。 しかし、代わりに給食が子供の体型に与える影響について分析した研究代表者と研究協力者の共著論文をほぼ完成させ、国際学会、国内学会、および研究会で発表することができた。それと同時に、近年の日本の社会保障制度の変更について精査し、雇用保険給付に時期や個人特性による非連続な給付水準の変化があることがわかった。海外での社会保障制度変更が子供のいる世帯に与えた影響、および、非連続な変化を識別に利用した計量経済学的手法についてレビューを行い、それらを踏まえて制度変更の因果的影響を検証するための計量モデルの構築を進めることができた。さらに、個票データ利用のため、厚生労働省に対して「国民生活基礎調査」の調査票情報の利用を申請し許可され、「21世紀成年者縦断調査」の調査票情報についても厚生労働省に現在利用申請中である。したがって、全般的な進捗状況としてはおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、給食が子供の体型に与える影響について分析した研究代表者と研究協力者の共著論文 “Wholesome Lunch to the Whole Classroom: Short- and Long-Term Effects on Early Teenagers’ Body Weight”を国際学会The European Health Economics Association, EuHEA 2018 Conferenceで発表するとともに、査読付国際学術誌に投稿する。 また、調査票情報の利用申請の許可を得ている厚生労働省「国民生活基礎調査」の個票データを利用して、母子世帯の生活水準の長期的変化を明らかにするとともに、母子世帯を対象とする社会保障政策や育児休業給付制度の変更が、親の就業、世帯の所得や支出、親子の健康、子供の就学、祖父母との同居等に及ぼした影響について分析する。また、現在調査票情報の利用を申請中の厚生労働省「21世紀成年者縦断調査」の個票データを用いて、データのパネル構造を利用して同一の調査対象における母子世帯の生活水準の変化を検証するとともに、母子世帯を対象とする社会保障政策、育児休業制度、ならびに失業給付制度の変更が親の就業や精神的健康、世帯の所得や支出、暮らしの状況、祖父母との同居、離婚、等に及ぼした影響について分析する。分析に際しては、制度変更がもたらした外生的な変化や、時期や個人特性のわずかな違いによる給付水準の非連続な変化等を識別に利用し、因果的影響の厳密な検証を目指す。さらに、今後必要に応じて21世紀出生児縦断調査、全国母子世帯等調査、国民健康・栄養調査、人口動態調査、等の公的調査の調査票情報の利用申請を行い、利用が許可されたデータを用いて分析を行う。分析結果を論文にまとめ、国内および海外の学会報告に投稿し、学会や研究会での研究発表で得られたフィードバックをもとに論文を改稿し、査読付国際学術誌への投稿準備を進める。
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Causes of Carryover |
研究協力者であるシドニー工科大学の丸山士行が日本に渡航し研究代表者である中村さやかと研究打ち合わせを行う予定であったが、丸山が別用務で訪日した際に中村と研究打ち合わせを行うことができたため、丸山の日本への渡航費が不要となった。 今年度に研究打ち合わせのために丸山が日本に渡航することで、次年度に計上していた海外旅費を使用する計画である。
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Research Products
(5 results)