2018 Fiscal Year Annual Research Report
Social security reform: quantitative analysis of economic, fiscal and welfare costs associated with policy uncertainty
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16K03705
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北尾 早霧 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (50769958)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 少子高齢化 / マクロ経済 / 不確実性 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢化が進む日本では、社会保障支出が急増すると同時に労働力の減少による大幅な税収減が予測される。制度改革が不可避である一方、痛みを伴う改革を先送りするインセンティブが存在し、どのタイミングでいかなる政策が実施されるかに関して不確実性が存在する。本研究では、動学的一般均衡モデルを用いて改革を先延ばしにすることによって生じる経済的な影響、財政および厚生効果を推計し、改革時期と内容の不確実性に起因するコストについて数量分析した。 全体の成果として、以下二本の論文を執筆した。第一の論文"When Do We Start? Pension Reform in Aging Japan" (Japanese Economic Review, 2017)では、年金制度の改革時期の違いによる財政・マクロ経済変数への影響について動学的一般均衡モデルを用いて計量分析した。改革が先送りされる場合、ライフサイクルにおける貯蓄および労働インセンティブは減少し、総労働供給と総資本は低下する。資本の大幅な減少は労働需要を弱め、賃金は低下する。改革の先送りは経済活動の停滞と賃金の低下、過大な税負担を将来世代に残す結果となった。 第二の論文"Policy Uncertainty and Cost of Delaying Reform: The Case of Aging Japan" (Review of Economic Dynamics, 2018)では、年金制度に関する改革の不確実性を明示的に世代重複型一般均衡モデルに組み入れ、政策の不確実性および改革の先送りによる経済的および厚生的費用を計量分析した。改革の先送りが若者および将来世代の負担増と厚生の悪化につながるという結果は第一の論文と同様である。不確実性そのものは、貯蓄と資本の増加を促し、実質金利の低下、賃金の上昇につながることを示した。 国内外のカンファレンス・学会(韓国中央銀行カンファレンス、日本経済学会)や大学のセミナー(東京大学、京都大学、一橋大学、オーストラリア国立大学)などにおいて論文の発表を行い、研究内容の発信を行った。
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