2016 Fiscal Year Research-status Report
選挙制度と政治行動の理論と実証分析:「選挙公報」にみる候補者戦略
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16K03708
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
江口 匡太 中央大学, 商学部, 教授 (50302675)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 選挙 / 衆議院 / 小選挙区 / 中選挙区 / 東京都選挙区 / 戦略的行動 / 参議院 / 東京都 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画の初年度ということもあり、改めて先行研究のサーベイを行った。具体的には、Persson and Tabellini (2000) "Political Economics: Explaining economic policy"の基本モデルを振り返りつつ、そこで紹介された学術論文をサーベイした。選挙制度について、小選挙区制と比例代表制の違いが政治家の行動にどのような影響を与えるのか、また、統治機構が議院内閣制と大統領制とではどのように異なる影響をもたらすかについて、公共財の供給、多数の人口を占める階層の影響、選挙区が統合され大きくなった場合の影響など、仮説を立てるうえで重要な理論的結論を整理することができた。 また、衆議院議員選挙と参議院議員選挙の東京都選挙区の選挙公報のデータを分析し、衆議院においては小選挙区移行後に、その選挙区の地方公共財の充実を訴えるメッセージが減っていることを確認した。一方で、国防や外交に関する公約は、70年代後半から80年代にかけては、冷戦構造を反映したイデオロギー的な立場から安全保障や外交に関するメッセージが出されていたが、90年代に入ると全くと言っていいほど見られなくなることがわかった。この時期は冷戦が終結し、世界的にも緊張が緩和したことが反映したようである。その後21世紀に入ると、わが国の周囲で領土上の緊張関係が高まったことを反映して、安全保障上の公約が頻繁にみられるようになっている。以上から、国防や外交に関するメッセージは、選挙制度の影響よりもわが国を取り巻く世界環境からの影響の方が大きいことが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで様々な理論モデルが構築され、政治システムの経済分析が進められてきたが、改めて基本文献を網羅することによって、しっかりした展望を得ることができた。データの仮説検定を行う上で、有意義な作業ができたと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
データの統計学的な分析を進め、表面上観察された事柄がどの程度有意な現象なのか識別できるように努める。
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Causes of Carryover |
研究計画の初年度でもあり、改めて先行研究のサーベイに時間を割くことになったため、執行額がやや少額になったが、研究計画の遂行は3年全体で行う予定であり、確実な研究遂行を優先したために次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
書籍や物品の購入、出張旅費などに充てる予定である。
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